日本歴史時代作家協会 公式ブログ

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2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『映画に溺れて』第150回 てなもんや大騒動

第150回 てなもんや大騒動 平成七年七月(1995)大井 大井武蔵野館 私の小学生時代の後半から中学生にかけて、TVで人気があったのが藤田まこと主演の『てなもんや三度笠』である。長谷川伸の名作『沓掛時次郎』ならぬあんかけの時次郎。泉州の出で…

『映画に溺れて』第149回 小早川家の秋

第149回 小早川家の秋 平成元年二月(1989)銀座 並木座 小津安二郎といえば、都会的に洗練されたイメージが強いが、この映画、いきなり、森繁久彌のあくの強い大阪弁で笑わされる。小津作品としては珍しい大阪ものなのだ。 中村鴈治郎の造酒屋の隠居…

『映画に溺れて』第148回 大当り三代記

第148回 大当り三代記 平成八年八月(1996)大井 大井武蔵野館 懐かしい大阪の喜劇人や漫才師、特に私が子供の頃の人気者たちが次々に登場する。脚本が花登筐。 明治、大正、昭和と三代にわたる饅頭屋の確執。 明治時代、大阪の老舗の大旦那渋谷天外…

『映画に溺れて』第147回 親バカ子バカ

第147回 親バカ子バカ 平成七年七月(1995)大井 大井武蔵野館 かつて大井武蔵野館で関西芸人コテコテエンタテインメントという特集があり、アチャコの『お父さんはお人よし』、大村昆の『番頭はんと丁稚どん』、藤田まことの『てなもんや大騒動』、…

『映画に溺れて』第146回 色ごと師春団治

第146回 色ごと師春団治 平成十三年八月(2001)京橋 フィルムセンター 私が子供の頃、大阪のTV局は土曜や日曜の昼間、平日の深夜など、繰り返し繰り返し松竹新喜劇の舞台を放送していた。劇場で生の舞台はそれほど観ていないのに、けっこう新喜劇…

『映画に溺れて』第145回 世にも面白い男の一生 桂春団治

第145回 世にも面白い男の一生 桂春団治 平成二十年七月(2008)神保町 神保町シアター 松竹新喜劇の演目に『桂春団治』があり、長谷川幸延原作の小説を館直志が戯曲化したもので、館直志とは渋谷天外(先代)のペンネームである。渋谷天外著『わが喜…

『映画に溺れて』第144回 夫婦善哉

第144回 夫婦善哉 昭和五十六年十一月(1981)池袋 文芸坐 森繁久彌が好きなのだ、私は。森繁主演の『夫婦善哉』は学生時代にTVで観て、その後、池袋文芸坐、京橋フィルムセンター、小平市ルネこだいら、京都文化博物館と繰り返し観ており、何度観…

大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第32回 独裁者

水泳総監督の田畑政治(阿部サダヲ)が全種目制覇を目標に挑んだロサンゼルス・オリンピック。すべておいて勝利することは出来ませんでしたが、日本は金、銀、銅合わせて十八個のメダルを獲得し、大活躍を見せました。 帰国した選手たちは人々から熱狂的に迎…

『映画に溺れて』第143回 みみずく説法

第143回 みみずく説法 平成四年三月(1992)三軒茶屋 スタジオams 勝新太郎はさすがに名優で、関東出身なのに『悪名』で主演、八尾の朝吉という人物の大阪弁は見事だった。原作は今東光。明治生まれの小説家であり、僧侶であり、国会議員にもなっ…

『映画に溺れて』第142回 悪名

第142回 悪名 平成十二年五月(2000)千石 三百人劇場 私が大阪府立八尾高校へ入学したとき、社会科の先生が嘆いておられた。今東光のおかげで河内の悪いイメージが全国に広まったと。人気流行作家今東光が描いた河内人はみな無学で下品、ケチで好色…

頼迅庵の歴史エッセイ14

14 柳生久通のキャリア(8)【補遺】 前回で「江戸の北町奉行柳生主膳正久通について」は、終わりますと宣言しましたが、一つだけ忘れていたものがあります。それは長谷川平蔵宣以との比較です。そのため、補遺として追加したいと思います。ちなみに、あく…

『映画に溺れて』第141回 白い巨塔

第141回 白い巨塔 令和元年七月(2019)池袋 新文芸坐 一九六〇年代の大阪の大学病院。助教授の財前五郎は天才的な外科医として病院の内外から注目を集めており、三月で退官する第一外科の東教授の後任と目されていた。野心家の財前は言う。教授が大…

『映画に溺れて』第140回 バタフライエフェクト

第140回 バタフライエフェクト 平成十七年九月(2005)飯田橋 ギンレイホール 時間SFにもいろいろあるが、子供の頃の日記を見つめ、あの時こうすればよかったと強く願うことで、過去が変わり、その後の人生も変化して別の現在になっているというユ…

『映画に溺れて』第139回 オーロラの彼方へ

第139回 オーロラの彼方へ 平成十二年十一月(2000)銀座 ガスホール タイムマシンで過去や未来へ行く話。タイムマシンを使わなくても、魔法や念力や異次元の扉や、その他の方法で別の時間へタイムスリップする話は多い。が、タイムスリップすること…

『映画に溺れて』第138回 ある日どこかで

第138回 ある日どこかで 昭和六十年九月(1985)大井 大井ロマン タイムマシンも使わず、魔法使いの手も借りず、タイムスリップする映画も実はけっこうあるのだ。私が大好きな一本がリチャード・マシスンの小説の映画化、ロマンチックなファンタジー…

『映画に溺れて』第137回 おかしなおかしな訪問者

第137回 おかしなおかしな訪問者 平成六年三月(1994)池袋 文芸坐2 タイムスリップものにもいろいろあるが、フランスコメディ『おかしなおかしな訪問者』ではタイムマシンではなく魔法で時を超える。 場面は中世ヨーロッパ。豪傑伯と異名をとる勇猛…

大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第31回 トップ・オブ・ザ・ワールド

ロサンゼルス・オリンピックも中盤。女子二百メートル平泳ぎ決勝が行われることになります。女子のオリンピックプール控え室では、前畑秀子(上白石萌歌)恐慌に陥っていました。「勝てへん。勝てるわけない」 といいながら控え室の中を歩き回ります。チーム…

『映画に溺れて』 第136回 リバース

第136回 リバース 平成十一年一月(1999)新橋 新橋文化 時間逆行SF。低予算ながらアイデアが面白く、よく出来ている。 テキサスの砂漠にある閉鎖寸前の高速化研究所。そこで最後の実験が行われ、ついに成功する。 一方、砂漠を行く女刑事が事故で…

『映画に溺れて』第135回 グランドツアー

第135回 グランドツアー 平成四年六月(1992)新宿歌舞伎町 新宿シネパトス ジェフ・ダニエルズ主演の『グランドツアー』は心に残る時間SFの佳作である。 なんの変哲もないアメリカの田舎町。町はずれで小さなホテルの開業準備している主人公、妻は…

『映画に溺れて』第134回 タイムコップ

第134回 タイムコップ 平成七年一月(1995)池袋 文芸坐 はるか未来にはタイムマシンが実用化されていて、これを悪用した歴史の改変が行われる。その時間犯罪を阻止するため、各時代に時間監視員が設置されているというのが私の愛読するポール・アン…

『映画に溺れて』第133回 タイム・アフター・タイム

第133回 タイム・アフター・タイム 昭和五十六年九月(1981)新宿 新宿ビレッジ2 H・G・ウェルズといえば、十九世紀末に『宇宙戦争』『透明人間』『モロー博士の島』など、様々なSF小説を書いたイギリスの作家であるが、その代表作のひとつが『…

『映画に溺れて』第132回 バック・トゥ・ザ・フューチャー

第132回 バック・トゥ・ザ・フューチャー 昭和六十年十二月(1985)大阪 梅田 三番街シネマ3 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は私のベスト映画の中の一本で、公開当時、大阪に帰省中の大晦日に観て、あまりの面白さに、新年に東京に戻ってニュー…

新書専門書ブックレビュー5

『海賊の日本史』(山内譲、講談社現代新書) 海賊の日本史 (講談社現代新書) 作者: 山内譲 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/06/21 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 昔、「日本では海洋小説は好まれない」という趣旨の文章を読んだ記憶があ…

『映画に溺れて』第131回 ちょんまげぷりん

第131回 ちょんまげぷりん 平成二十三年一月(2011)目黒 目黒シネマ 時間SFの中でも私はタイムスリップものが大好きである。『ちょんまげぷりん』は江戸時代の武士が現代にタイムスリップする物語。 巣鴨に住むシングルマザー。会社勤めと子育てと…

大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第30回 黄金狂時代

四百メートル自由形水泳選手の、大横田努(林遣都)はトイレに駆け込んでいます。だいぶ苦しい様子でしたが、素知らぬ顔で皆のところに戻っていきます。 ロサンゼルスの地にて昭和7年(1932)7月30日、第十回オリンピックが開幕します。参加国は37。日本から…

『映画に溺れて』第130回 竜馬暗殺

第130回 竜馬暗殺 昭和五十年九月(1975)京都 一乗寺 京一会館 原田芳雄といえば、七十年代の若者にとって、憧れのヒーローだった。反体制がかっこよかったあの時代、原田が演じるのはアナーキスト、やくざ、はみだし刑事、無頼の浪人や渡世人。映画…

『映画に溺れて』第129回 切腹

第129回 切腹 昭和五十年九月(1975)大阪 道頓堀 朝日座 江戸時代の初期、彦根藩井伊家の江戸屋敷を初老の浪人が訪ね、応対に出た武士に言う。自分は長らく浪人を続けているが、このまま惨めに朽ち果てるより、いっそ潔く腹を切って死にたい。そこで…

『映画に溺れて』第128回 八百万石に挑む男

第128回 八百万石に挑む男 平成十三年六月(2001)京橋 フィルムセンター 『大岡政談』で有名な天一坊事件である。 賭場で銭をすった遊び人風の若者が、金の代わりにと短刀をぽんと投げる。賭場の用心棒赤川大膳がそれに目を止め、別室へ呼んで話を聞…

国策落語

会員・亀和夫さんプロデュースのお仕事です。 歴史に埋もれてしまっていた国策落語をよみがえらせました。 珍しい国策落語

『映画に溺れて』 第127回 昨日消えた男

第127回 昨日消えた男 平成四年六月(1992)池袋 文芸坐2 私は遠山の金さんが好きだ。江戸の町奉行と長屋の遊び人が同じ人間、今ならさしずめ東京都知事と場末のアパートに住む無職の男が同一人物。ありえない設定であるが、だからこそ面白い。 若い…