日本歴史時代作家協会 公式ブログ

歴史時代小説を書く作家、時代物イラストレーター、時代物記事を書くライター、研究者などが集う会です。Welcome to Japan Historical Writers' Association! Don't hesitate to contact us!

2019-01-01から1年間の記事一覧

『映画に溺れて』第247回 小さな巨人

第247回 小さな巨人 昭和五十年七月(1975)大阪 中之島 SABホール 一九六〇年代末から七〇年代初期、マカロニウエスタンは別にしても、アメリカの西部劇にけっこう異色作が多かったように思う。反体制的なニューシネマの風潮も強く、タカ派のジョン…

『日本中世史、大好き!』第1回

第1回「中古念流」について いきなり私事で恐縮ですが、この度幻冬舎グループ主催の「時代小説コンテスト」で大賞を受賞しました。 https://www.gentosha-book.com/contest19/era/ 来年、電子書籍化されますので、お読みいただければありがたいです。 さて、…

『映画に溺れて』第246回 北国の帝王

第246回 北国の帝王 昭和四十九年八月(1974)大阪 難波 南街文化 学生の頃、ロバート・アルドリッチ監督の『北国の帝王』を初めて観て、わあ、こんなのもありなんだな、と思ってしまった。ハリウッド映画なのに美男美女が出て来ないし、勧善懲悪でもな…

『映画に溺れて』第245回 ロンゲスト・ヤード

第245回 ロンゲスト・ヤード 昭和五十年八月(1975)大阪 梅田 三番街シネマ2 バート・レイノルズ主演の代表作といえば、ジョン・ブアマン監督の『脱出』を思い浮かべる人は多いだろう。が、私はこっち『ロンゲスト・ヤード』が好きである。タフで女に…

『映画に溺れて』第244回 デス・レース2000年

第244回 デス・レース2000年 平成二十九年八月(2017)新宿 シネマカリテ 『スパルタカス』や『グラディエーター』に描かれるように、古代ローマの昔から、人は娯楽として死の格闘を楽しんでいた。現代でもスポーツ観戦、プロレスやボクシングやカー…

『映画に溺れて』第243回 バトルランナー

第243回 バトルランナー 昭和六十二年十二月(1987)大阪 難波 南街文化 『ターミネーター』で一躍売れっ子となったシュワルツェネッガー、一九八〇年代後半から次々とアクション映画に主演している。中でも私が好きなのがリチャード・バックマンことス…

『映画に溺れて』第242回 ターミネーター

第242回 ターミネーター 昭和六十三年八月(1988)三鷹 三鷹オスカー 最初の『ターミネーター』を観たのは公開から三年後、三鷹オスカーの三本立てで、あとの二本は忘れもしない『ブレードランナー』と『ロボコップ』だった。今では信じられないほど贅沢…

大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第45回 火の鳥

東京オリンピックを二年後に控え、田畑政治(阿部サダヲ)は、組織委員会の事務総長の座を追われます。 しかし田畑の家を仲間たちが訪ねていました。元水泳監督の松澤一鶴(皆川猿寺)、聖火リレーのコースを調査して回った森西栄一、そしてもちろん田畑の秘…

明治一五一年 第7回

明治一五一年 第7回 森川雅美 私たち放たれいく世界は澄んだ水だからどこからか足音が進んでいき幾つもの傷は開く横側からの人たちの眼は見えなく様ざまな場所に残される泥濘に迷いつつ哀しみも東西南北から雪崩れこみ糾われ暗くなる日日の営みが滲んでいく…

『映画に溺れて』第241回 イエスタデイ

第241回 イエスタデイ 令和元年十一月(2019)大阪 千日前 TOHOシネマズなんば別館 ビートルズが好きだと、何倍も楽しめる。思えばジョン・レノンは四十歳で亡くなっているのだ。 イギリスの小さな港町に住むジャックは売れないミュージシャンだった…

『映画に溺れて』第240回 聖なる泉の少女

第240回 聖なる泉の少女 令和元年七月(2019) 京橋 テアトル試写室 私が常日頃好む映画は、たいていはエンタテインメントである。コメディ、アクション、ミステリ、SF、ミュージカル、ファンタジー、ホラーなどなど。 だが、たまにはこういう静か…

『映画に溺れて』第239回 ショーン・オブ・ザ・デッド

第239回 ショーン・オブ・ザ・デッド 令和元年九月(2019)高円寺 ビアエンジン ビールを飲みながら映画を観る。それも生のクラフトビールで英国コメディなら、最高である。 高円寺にあるクラフトビール店ビアエンジンで上映会が行われた。一夜限りの…

『映画に溺れて』第238回 ステキな金縛り

第238回 ステキな金縛り 平成二十三年十月(2011)新所沢 レッツシネパーク オープニングのタイトル、往年のハリウッド作品を思わせる作りになっていて、思わずにやり。 裕福な女性が殺され、別れた夫が逮捕される。彼は犯行のあった時刻、山の旅館で…

書評『嵐を呼ぶ男!』

書名『嵐を呼ぶ男!』著者名 杉山大二郎発売 徳間書店発行年月日 2019年11月30日定価 本体2000円(税別) 嵐を呼ぶ男! (文芸書) 作者: 杉山大二郎 出版社/メーカー: 徳間書店 発売日: 2019/11/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 信長という風…

『映画に溺れて』第237回 記憶にございません!

第237回 記憶にございません! 令和元年八月(2019)日比谷 東宝試写室 ロッキード事件を詳しく知らなくても、あの当時流行語となった「記憶にございません」という言葉は今でも人々の記憶に残っている。政界を揺るがした汚職騒ぎで現職の内閣総理大…

甲板のラブシーン

大谷羊太郎: 「小説家になろう」に、シリーズでエッセイを載せてます。本日送稿したのは「甲板のラブシーン ~一夜で消えた夢だった~」この不器用な私が、美女と情熱的に抱擁している。それも映画会社の撮影機の前で。まさかあの夜、こんな事態になるとは…

『映画に溺れて』第236回 コリン・マッケンジー もうひとりのグリフィス

第236回 コリン・マッケンジー もうひとりのグリフィス 平成十一年十月(1999)東中野 BOX東中野 映画監督のピーター・ジャクスンがニュージーランドの生家近くの納屋で古いフィルムを発見した。修復してみると、これが映画史にわずか名前だけ残っ…

『映画に溺れて』第235回 非現実の王国で

第235回 非現実の王国で 平成二十年五月(2008)渋谷 ライズX 二〇〇三年、青山のワタリウム美術館でヘンリー・ダーガー展を見たときの衝撃は忘れられない。子供奴隷、少女戦士、南北戦争を思わせる戦い。残酷と幻想のおびただしい絵物語。 一九七〇…

大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第44回 ぼくたちの失敗

昭和37年(1962)。東京オリンピックを二年後に控えて行われた第四回アジア競技大会。開幕直前に、規定違反が発覚します。開催国インドネシアが、政治的に対立する、台湾とイスラエルに招待状を送っていなかったのです。これがスポーツ界にとどまらず、国際…

『映画に溺れて』第234回 ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還

第234回 ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 平成十六年二月(2004)新宿歌舞伎町 ミラノ座 トールキンの『指輪物語』をピーター・ジャクソン監督が三部作に仕上げた。第一部は二〇〇二年に今はなき渋谷のパンテオンで、第二部は二〇〇三年にシネコン…

人生旅日記

人生旅日記・山の彼方[あなた]にあったもの ~ある幼な子の一日放浪記~(大谷羊太郎) - カクヨム

『映画に溺れて』第233回 トールキン

第233回 トールキン 令和元年六月(2019)六本木 20世紀フォックス試写室 うちの子供が幼い頃、ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』三部作を、公開のたびに観に行った。けっこう怖い場面もあったが、子供たちは喜んでいた。映…

『映画に溺れて』第232回 キング・オブ・コメディ

第232回 キング・オブ・コメディ 平成三年十二月(1991)池袋 シネマセレサ ホアキン・フェニックスの『ジョーカー』を観ていて、真っ先に連想したのがマーティン・スコセッシ監督の『キング・オブ・コメディ』だ。 ロバート・デ・ニーロ演じる売れな…

『映画に溺れて』第231回 ジョーカー

第231回 ジョーカー 令和元年十月(2019)有楽町 丸の内ピカデリードルビーシアター ティム・バートン監督の『バットマン』はただのヒーローアクションではなく、人間の暗黒面がリアリズムで描かれていた。路上強盗に両親を殺された大富豪の息子が、…

『映画に溺れて』第230回 大帝の剣

第230回 大帝の剣 平成十九年五月(2007)銀座 丸の内TOEI① 時間管理局を描いたSF小説『タイムパトロール』の作者ポール・アンダースン。この人の小説で大好きなもう一作が『天翔ける十字軍』である。中世のイングランドに舞い降りた宇宙人と騎…

『映画に溺れて』第229回 テルマエロマエ

第229回 テルマエロマエ 平成二十四年三月(2012)日比谷 東宝試写室 紀元二世紀の初め、ローマの大浴場を設計した建築家ルシウスは、依頼人から斬新さに欠けると文句をつけられ、悩んでいた。どうしたら画期的な浴場が作れるのか。悩んだ末に、浴場…

大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第43回 ヘルプ

昭和37年(1962)。東京の景色が劇的に変わり始めます。環状線に囲まれ、首都高や新幹線の高架が頭上を通過する。すべてが突貫工事で行われていました。二年後のオリンピックに間にあわせようと必死です。しかし国民の盛り上がりは今ひとつでした。 そこで田…

『映画に溺れて』第228回 バブルへGO!! タイムマシンはドラム式

第228回 バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 平成十九年六月(2007)池袋 サンシャイン劇場 平成十九年、日本の経済は破綻し、国家そのものが破産寸前。これを打破する解決策は政府首脳にも打ち出せなかった。 そんなとき、新型洗濯機を開発中の…

『映画に溺れて』第227回 バンデットQ

第227回 バンデットQ 昭和五十八年三月(1983)新宿 新宿ロマン モンティパイソンの六番目の男。当時TVシリーズでいつも変なアニメーションを作っていた唯一アメリカ人のテリー・ギリアムはその後、監督として活躍している。ギリアムで好きな映画…

『映画に溺れて』第226回 タイムライン

第226回 タイムライン 平成十六年一月(2004)有楽町 日劇1 マイケル・クライトンの原作が早川書房からハードカバー上下二冊で出たとき、あまりの面白さにむさぼるように読んだ。映画化を待ち望んでいたが、やはりあれだけの原作を二時間の映画にま…