2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧
第301回 サウンド・オブ・ミュージック 昭和五十年九月(1975)大阪 梅田 梅田スカラ座 出だしからして、圧倒される。オーストリアのザルツブルグの街並み、そして山々の風景、丘の上の小さな点のような人影がだんだん近づき、だんだん大きくなって、そ…
第300回 イヴの総て 平成二年十月(1990)池袋 文芸坐 シェイクスピア劇にも匹敵する完成度、計算されつくしたストーリー展開、善人も悪人もともに魅力ある登場人物、それを的確に演じる個性的な俳優たち。映画はこうでなければならない。 大女優がいて…
第299回 御手洗薫の愛と死 平成二十五年十一月(2013)銀座 東映試写室 私は映画ばかり観て暮らしているが、実のところ、本業は小説を書いている。売れてないけど。だから、小説家が主人公の映画は特に気になる。 吉行和子が主演の『御手洗薫の愛と死』…
第298回 9人の翻訳家 令和元年十二月(2019)青山 ギャガ試写室 本が売れない時代になった。売れるのはごく一部のベストセラーのみ。となると、大手出版社は必ず売れる本だけを出そうとする。出版はビジネスなのだ。 世界的なベストセラー小説『デダリ…
『明智光秀 牢人医師はなぜ謀反人となったか 』 明智光秀: 牢人医師はなぜ謀反人となったか (NHK出版新書) 作者:早島 大祐 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2019/11/11 メディア: 単行本 1.はじめに 明智光秀は、本年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』の主人…
天文十六年(1547)。秋。織田信秀(高橋克典)は、二万余りの兵を率い、美濃との国境に陣を敷き、いくさの構えをとりました。 明智光秀十兵衛(長谷川博己)は、旅から帰ってきたところでした。稲葉山城にて、叔父の明智光安(西村まさ彦)と話します。織田信秀が…
第297回 テリー・ギリアムのドン・キホーテ 令和元年十二月(2019)渋谷 ショウゲート試写室 何度も何度も挫折を繰り返し、ようやく完成した。テリー・ギリアムの見果てぬ夢『ドン・キホーテを殺した男』が。 スペインで『ドン・キホーテ』を撮影中の若…
第296回 ロスト・イン・ラ・マンチャ 平成十五年十二月(2003)池袋 新文芸坐 TVのモンティ・パイソンは英国BBCのお笑い番組で、オックスフォードとケンブリッジ出身の五人の秀才が自作自演で相当におふざけのギャグを演じていた。これにナンセンス…
第295回 アマデウス 昭和六十年二月(1985)新宿 新宿ピカデリー ピーター・シェーファーの戯曲は、日本でもたくさん上演されていて、私は『アマデウス』の舞台版は映画化される前に池袋のサンシャイン劇場で観ている。昭和五十八年で、主演のサリエリに…
第294回 盲目のメロディ 令和元年十二月(2019)新宿 新宿ピカデリー 事前になんの予備知識もなく、こういう映画に出合うと、私はうれしくてたまらない。さあ、この先、いったいどうなるのだろう。わくわくしながら観て、最後に満足感を味わう。詳しく最…
書 名 『梅と水仙』著 者 植松三十里発行所 PHP研究所発行年月日 2020年1月14日定 価 ¥1800E 梅と水仙 作者:植松 三十里 出版社/メーカー: PHP研究所 発売日: 2019/12/15 メディア: 単行本 維新直後の明治4年(1871)11月12日、横浜から…
第293回 芳華 令和二年一月(2020)西東京 保谷こもれびホール 一九七〇年代、文化大革命末期から中越戦争までを人民解放軍に属する芸術部門「文工団」を中心に描いた中国の現代史。美しくも切ない青春映画である。 最初、いきなり毛沢東や中国共産党を…
第292回 ミッドナイト・イン・パリ 平成二十四年四月(2012)京橋 テアトル試写室 かつて、冷凍冬眠された現代の小市民が未来世界で目覚める『スリーパー』を自演したウディ・アレンだが、『ミッドナイト・イン・パリ』は『夜ごとの美女』を連想させるタ…
第291回 夜ごとの美女 平成八年九月(1996)下高井戸 下高井戸シネマ 谷啓主演の『空想天国』のことを書いていて、ふと思い出したのがジェラール・フィリップの『夜ごとの美女』である。 ジェラール・フィリップといえば、アラン・ドロン以前の美男の代…
1547年.室町幕府末期。武家の頭領である将軍足利氏は、家臣たちの権力闘争と足利家の内紛により、力を失っていました。幕府は弱体化し、争いは各地に伝播していきました。 京から40里離れた美濃の国。農地を見回っていた明智十兵衛光秀(長谷川博己)は、野盗…
第290回 パリ、嘘つきな恋 令和元年十月(2019)飯田橋 ギンレイホール なんて素敵な恋だろうか。私はベタベタの恋愛映画はあまり好きではないが、フランスのラブコメディ『パリ、嘘つきな恋』には、どっぷりはまって、心ときめいた。 五十歳を間近にひ…
当会会員の平野周氏(幻冬舎グループ主催「時代小説大賞」受賞者)の新刊です。 読者の皆様、よろしくお願い致します。 悍馬、室町を駆ける 作者:平野 周 出版社/メーカー: 文芸社 発売日: 2020/02/01 メディア: 文庫
第289回 エクストリーム・ジョブ 令和元年十月(2019)渋谷 ショウゲート試写室 麻薬捜査課精鋭チームの五人組。精鋭というよりは、ついやりすぎて、署内でも浮いてしまう五人。 麻薬組織のアジト情報が入る。たまたまアジトの向かいにチキン唐揚げ店が…
第288回 もしも昨日が選べたら 平成十八年十二月(2006)飯田橋 ギンレイホール 家庭にあるさまざまな電化製品。TVやエアコンなど、それぞれにリモコンがあって、どれがどれか混乱してしまうこともある。 アダム・サンドラーふんする建築家。家庭には…
第287回 ジュマンジ 平成八年四月(1996)大阪 道頓堀 SY角座 十二才のアランはいじめられっ子だった。父は大きな靴工場の経営者。アランは工場拡張の工事現場で偶然古めかしいゲーム盤を発見し、家に持ち帰る。両親の留守に近所の女の子サラとゲーム…
第286回 ウルトラマン 平成二十二年八月(2010)銀座 銀座シネパトス TVでウルトラマンが登場したのが一九六六年。その前に同じ時間帯で『ウルトラQ』というトワイライトゾーンを思わせる不思議なシリーズがあり、その後が『ウルトラマン』シリーズ、…
第285回 のり平の三等亭主 平成十二年五月(2000)黄金町 シネマジャック 一九五〇年代、TVの普及していなかった頃の映画館での一時間のホームドラマ。 東京郊外に住む新婚サラリーマン。三木のり平と中田康子。風景は『マダムと女房』に似ている。 こ…
第284回 次郎長意外伝 灰神楽の三太郎 平成十二年五月(2000)黄金町 シネマジャック 三木のり平といえば、真っ先に思い浮かぶのが海苔の佃煮のコマーシャルと、社長シリーズの宴会好きの課長役。なにかにつけ、うれしそうにパーッといきましょうとはし…
第283回 奇々怪々俺は誰だ 平成二十二年十二月(2010)銀座 銀座シネパトス 銀座シネパトスの谷啓追悼特集、二本目が『奇々怪々俺は誰だ』 これほどまでにシュールでナンセンスな映画、それを普通の東宝コメディで撮っているとは。 主人公の名前が鈴木太…
第282回 空想天国 平成二十二年十二月(2010)銀座 銀座シネパトス 子供の頃、私はクレージーキャッツが大好きで、植木等もハナ肇も好きだったが、谷啓には特に惹かれていた。 谷啓が亡くなったとき、銀座シネパトスで追悼特集「虹を渡ってきた男・ガチ…
第281回 女は男のふるさとヨ 平成十二年五月(2000)黄金町 シネマジャック 森繁久弥といえば、社長シリーズに駅前シリーズが有名で、新宿芸能社を舞台にしたシリーズ、たくさんは続かなかったが、私は好きだ。『夫婦善哉』の流れに属する駄目なのに…
第280回 陽気な未亡人 平成十五年十一月(2003)阿佐ヶ谷 ラピュタ阿佐ヶ谷 ノエル・カワードに『陽気な幽霊』という舞台劇があり、テアトルエコーの公演を観たことがある。『陽気な未亡人』はタイトルからして、おそらくこのカワード戯曲をヒントにして…
第279回 シックスセンス 平成十一年十一月(1999)渋谷 渋東シネタワー いろんな映画をたくさん観て、すれっからしになってくると、意外な結末だといわれても、先が読めてしまうことが多いのだが、この映画にはだまされた。今ではこの最後のどんでん返し…
第278回 永遠に美しく 平成四年十二月(1992)渋谷 渋東シネタワー1 いつまでも若く美しくありたいと願うのは女性ならば当然であろう。だがしかし、不老不死には落とし穴が。メリル・ストリープの女優とゴールディ・ホーンの女流作家がブルース・ウィリ…
第277回 ビッグ 平成十一年三月(1999) 調布 グリーンホール小ホール 年齢とともに貫禄のある役が多くなったトム・ハンクスだが、若い頃はけっこう軽い喜劇に主演していた。中でも私が好きなのが『ビッグ』である。 十二歳のジョシュは好きな女の子にガ…