日本歴史時代作家協会 公式ブログ

歴史時代小説を書く作家、時代物イラストレーター、時代物記事を書くライター、研究者などが集う会です。Welcome to Japan Historical Writers' Association! Don't hesitate to contact us!

2020-01-01から1年間の記事一覧

『映画に溺れて』第393回 流れ者

第393回 流れ者 昭和四十九年八月(1974)大阪 中之島 フェスティバルホール 泡抜きのビールを好む男が主人公の『流れ者』、クロード・ルルーシュ監督、主演がジャン=ルイ・トランティニャン、おしゃれな犯罪映画である。 いきなりミュージカルの場面で…

明治一五一年 第17回

明治一五一年 第17回 いくつかの記録の狭間に落ちていく 人の声を拾いながら 慶応三年の陸奥の背の すでに一五一年の影たち が燃える静かな刻限が近づき 明治二八年の大陸への貧しき傷の 北上する足と南下する足の吃音 の重なりは届かぬ野だと 明治三八年の…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第二十七回 宗久の約束

永禄十一年(1568年)。七月。足利義昭(よしあき)(滝藤賢一)の一行は、美濃の立政寺に到着しました。その中には明智光秀十兵衛(長谷川博己)の姿もあります。織田信長(染谷将太)は、ひれ伏して義昭の到着を待っていました。足利義昭は、信長の前に回…

『映画に溺れて』第392回 男と女 人生最良の日々

第392回 男と女 人生最良の日々 令和二年八月(2020)飯田橋 ギンレイホール レーサーのジャン・ルイは妻が自殺。映画撮影所の記録係アンヌは夫が事故死。ふたりはそれぞれ幼い子供を同じ寄宿舎に預けていて、それがきっかけで親しくなり、やがて愛し合…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第二十六回 三淵の奸計(かんけい)

永禄十年(1567年)。越前の大大名、朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)がついに上洛を決意しました。 一方、京は依然として、三好長慶の一族が支配し続けていました。その三好勢が担いだ四国阿波の足利義栄(よしひで)が、急遽十四第将軍つきました。とこ…

第9回日本歴史時代作家協会賞 選評

第9回日本歴史時代作家協会賞 選評 三田誠広(審査委員長) ・作品賞 ・新人賞 ・文庫書下ろし賞 菊池 仁(選考委員) ・新人賞 ・文庫書き下ろし新人賞 ・作品賞 ・文庫書き下ろしシリーズ賞 ・功労賞 ・慰労賞 雨宮由希夫(選考委員) ・文庫書き下ろし新…

書評『父のおともで文楽へ』

書 名 『父のおともで文楽へ』著 者 伊多波碧発行所 小学館発行年月日 2020年9月13日定 価 ¥700E 父のおともで文楽へ (小学館文庫) 作者:碧, 伊多波 発売日: 2020/09/08 メディア: 文庫 短編連作5話をまとめた文庫書下ろしである。本の帯に「心にポツンと…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第二十五回 羽運ぶ蟻(あり)

永禄九年(1566年)。覚慶は還俗して足利義昭(滝藤賢一)を名乗り、朝倉義景(ユースケ・サンタマリア)を頼りに越前へ向かいました。しかし一行は、一乗谷からほど遠い、敦賀に留め置かれ、三月、半年と、時だけが過ぎていきました。 落ち着かないでいる細…

会員の短編小説をアップしました

会員の短編小説一覧 ◆西山ガラシャ渡りゆく ◆三田誠広 陰陽師紫式部 ◆天堂晋助 戦争にいってきた母のおじさん ◆響由布子 針妙(しんみょう)の長い一日 「針妙」と「おはり」 当会会員の皆様へ: 現在、短編原稿とリレーエッセイ執筆者を募集しております。 …

『映画に溺れて』第391回 フランケンウィニー

第391回 フランケンウィニー 平成六年十二月(1994)日比谷 日比谷映画 ティム・バートンはフランケンシュタインが好きなのだと思う。ごく初期の短編が『フランケンウィニー』であり、これは後にストップモーションアニメの長編としてリメイクされた。 …

三田誠広さん未発表原稿

会員・三田誠広さんの未発表短編をアップしました。 rekishijidai.jugem.jp

書評『魔王の黒幕 信長と光秀』

書名『魔王の黒幕 信長と光秀』著者 早見 俊発売 中央公論新社発行年月日 2020年7月25日定価 ¥880E 魔王の黒幕-信長と光秀 (中公文庫) 作者:早見 俊 発売日: 2020/07/22 メディア: 文庫 光秀の前半生は謎に包まれ、主殺しの理由も諸説ある。本書…

新刊『父のおともで文楽へ』

会員さんの新刊です。 アマゾンより転載: 母の三回忌法要で実家を訪ねた佐和子は、父・敬一郎から文楽を観に行こうと誘われる。娘の梨々花が元夫・義彦との面会で不在のため、お付き合いで国立劇場へ向かった。演目は『心中天網島』。紙屋治兵衛は、妻への…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第二十四回 将軍の器

永禄八年(1565年)。五月。京で、前代未聞の一大事変が起ります。将軍足利義輝(向井理)が襲撃を受けたのです。覇権を取り戻そうとする、三好長慶の子、義継の軍勢が二条御所に攻め込みました。永禄の変です。 足利十三代将軍義輝は、三十年の生涯を閉じた…

小島環さん新刊

会員小島環さんの新刊です。(連絡ありがとうございます!) 泣き娘 作者:小島 環 発売日: 2020/10/05 メディア: 単行本

『映画に溺れて』第390回 悪魔のはらわた

第390回 悪魔のはらわた 平成七年七月(1995)六本木 俳優座劇場 3Dの映画は昔からあった。私が子供の頃、片目が青、片目が赤のセルロイドの眼鏡で見た記憶がある。 新宿高島屋のオープンに合わせてタイムズスクエア内に登場した東京アイマックスシ…

書評『家康(二) 三方ヶ原の戦い』

書名『家康(二) 三方ヶ原の戦い』著者名 安部龍太郎発売 幻冬舎発行年月日 2020年8月10日定価 本体690円(税別) 家康<二> 三方ヶ原の戦い (幻冬舎時代小説文庫) 作者:安部 龍太郎 発売日: 2020/08/06 メディア: 文庫 本書は2016年12月に刊…

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第二十三回 義輝、夏の終わりに

永禄七年(1564年)九月。京を中心に、機内に絶大な権力を誇った三好長慶がその生涯を閉じました。将軍足利義輝(向井理)は、復権をはかり、京は再び動乱の時代に入りました。 明智光秀十兵衛(長谷川博己)は義輝にいいました。 「信長が上洛し、上様をお支え…

書評『光秀の忍び』

書名『円也党奔る 光秀の忍び』著者 早見 俊発売 中央公論新社発行年月日 2020年7月15日定価 ¥700E 円也党、奔る 光秀の忍び (徳間文庫) 作者:早見俊 発売日: 2020/07/09 メディア: 文庫 明智光秀といえば「本能寺」だが、本作品は、姉川の合戦…

大谷羊太郎さんのオンラインイベント

もうすぐ公開ということで、楽しみにしてます。私も、なぜか朗読に駆り出されてしまった。他の人たちは、みなおどろくほど上手です。 https://t.co/Dz544KER43 — 大谷羊太郎 (@otaniyotaro) 2020年9月11日

平井正修さん新刊

会員・平井正修さんの新刊です。 長生きも不安、死も不安――。「散る」を知り、心は豊かになります。残りの人生を笑顔で過ごすために、お釈迦様の“最期のお経《遺教経》"から学ぶ8つのこと。 「心を調える」学びは、一生、必要。 ・持ちすぎない――「小欲(しょ…

『映画に溺れて』第389回 ゴシック

第389回 ゴシック 昭和六十三年五月(1988)新宿歌舞伎町 シネマスクエアとうきゅう 怪物を創ったのはヴィクター・フランケンシュタインだが、そのフランケンシュタインを創造したのはうら若き乙女であった。という秘話を描いたのがケン・ラッセル監督の…

井伊和継さん新刊

■会員から連絡をいただきましたのでご案内を致します。 読者の皆様、よろしくお願い致します。 目利き芳斎 事件帖1 二階の先生 (二見時代小説文庫) 作者:和継, 井伊 発売日: 2020/08/26 メディア: 文庫 ※会員の皆様、新刊情報をお寄せ下さい。連絡をお待ちし…

会報を発送しました

昨日、有志が集い、都内某所にて『会報』の発送作業を行いました。今回も会員、元会員会友、出版社、関係者に広く送付しております。お手に取ってごらんください。

大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第二十二回 京よりの使者

桶狭間の戦いから四年後の永禄七年(1564年)、冬。明智光秀十兵衛(長谷川博己)は、いまだ越前国で浪人生活を送っていました。 この頃、京は三好長慶(山路和弘)が完全に実権を掌握していました。松永久秀(吉田鋼太郎)は大和の国(現在の奈良県)を任さ…

明治一五一年 第16回

明治一五一年 第16回 誰かの背中を眺めている誰かの背中を見詰める目の内側に広がる荒野はいまだに傷付いていく声の端の踏み外す一瞬であるなら東征する数えきれぬ足裏のすでに忘却される一五一年の記憶される土の香りの畔から途切れなくつづく面影の後に発…

『ひねもすのたり新刊書評』2020年8月号

ひねもすのたり新刊書評 2020年八月号 新型コロナウイルスの脅威の中で、もともと羅針盤を持てない政治は、右往左往し、経済は深刻な打撃を受けつつある。人間が営々と築き上げてきたものの脆弱さが際立つばかりの今日この頃である。それでもすごいと思うの…

『映画に溺れて』第388回 ヤング・フランケンシュタイン

第388回 ヤング・フランケンシュタイン 昭和五十一年一月(1976)大阪 千日前 大劇名画座 小学生の頃、TVで毎週欠かさず観ていたのが『ザ・マンスターズ』というアメリカのコメディ。毎回マンスター家にちょっとした問題が持ち上がるというホームドラ…

『映画に溺れて』第387回 フランケンシュタイン(1994)

第387回 フランケンシュタイン(1994) 平成七年二月(1995)渋谷 渋東シネタワー1 一九三一年のユニバーサル映画とは違い、メアリー・シェリーの原作にかなり忠実に作られ、時代考証もきちんとしているのが一九九四年、フランシス・フォード・コッ…

書評『誰?』

書 名 『誰?』著 者 明野照葉発行所 徳間書店発行年月日 2020年8月15日定 価 ¥770E 誰? (徳間文庫) 作者:明野照葉 発売日: 2020/08/07 メディア: Kindle版 冒頭に断っておくが、本書は歴史時代小説ではない。昨2019年の梅雨の頃から、台風19号の去った10…