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大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第6回 お江戸日本橋

 今週も軽くツッコんでいこうと思います。
 オリンピック予選会で優勝し、マラソンの世界記録を二十二分も更新した金栗四三
 四三は足袋(たび)を作っている播磨屋を訪ねます。以前四三は足袋を改良してもらおうと、その欠点を告げたところ、播摩谷は怒り、叩き出されたことがありました。四三は恐る恐る播磨屋の扉を開けます。まず頭を下げて謝ります。足袋のそもそもの役割を話し始める四三。四三が本題に入る前に、播磨屋は改良した足袋を投げてよこすのです。喜ぶ四三。礼を言って播磨屋をあとにします。
 一方、日本がオリンピックに参加するための要人だと目された嘉納治五郎高等師範学校校長室は、午後からは大日本体育教会に変わります。オリンピックに出場する選手を選抜する会議が行われていました。問題は、何人がエントリーするかです。費用が最大の懸念でした。滞在期間を一ヶ月として、ひとり千円はかかります。
 教授の永井は、費用のことで文部省に掛け合っていました。
「国立大学の学生は、国費で学んでおるのです。それを一月(ひとつき)も海外で遊ばせるなど」
 といわれてしまっていました。それを聞いて激高する嘉納。世界レコードを破ったのだぞ、と叫びます。それに関して新聞記事が見せられます。世界記録は誤測ではないかと、疑問を呈していました。
「ますますあとには引けん」と闘志を燃やす嘉納。「オリンピックに行き、彼らの実力を示し、汚名返上せねばならん」
 何人だったら行けるのか。その疑問に、予算を管理する助教授の可児は一人か二人との数を出します。短距離で三つの種目に優勝した三島弥彦生田斗真)には自費で行ってもらおうと提案する嘉納。彼の家は金持ちだからです。そのかわり金栗四三の分は、体育協会でなんとか用立てることにします。
 嘉納たちの所へ呼び出される四三。嘉納は四三をオリンピックに派遣することが決まった、と告げます。しかし四三の返答は嘉納の予想を裏切るものでした。
「行きとうなかです」
 驚いて怒りを発する嘉納。ついに
「なぜ世界記録など出したんだね」
 と叫ぶ始末。謝る四三。日頃の鍛錬の成果を試したかっただけで、そんな大きな大会とは知らなかったという四三。
「オリンピックとは何ですか」
 と嘉納に質問します。あきれる嘉納。
「そこからかね」
 とつぶやきます。嘉納は四三に説明します。
「言葉も文化も思想もちがう国の若者が、互いを認め合い、技を競い合うんだ」
「負けたら、切腹ですか」
 と、思い詰めた表情で問う四三。にらむ嘉納。四三は土下座します。
「それだけはお許しください」
 羽田では幸運にも勝つことができた。しかし国際大会など無理だ。自信がない。行けば勝ちたいと思うし、勝たないと期待をしてくれる国民が許してくれない。生きて帰れまい。
 嘉納は落胆します。
 夜、嘉納は短距離の三島弥彦に、オリンピックの代表を要請しに行きます。エントリーシートを突き返す三島。
「僕は出ません」という三島。「たかがかけっこごときで学校を休んでいたら、落第してしまいます」
 学校に帰ってきた嘉納は、自暴自棄になっていました。
「残念だが、ここはいさぎよく」
 などの言葉を口にしてしまいます。
 落胆のあまり力の抜けた嘉納たちのもとへ、四三がやってきます。優勝カップを返しに来たのでした。静かに四三を説く嘉納。
「負けても、切腹はせんでいい。勝ってこいというのではない。最善を尽くしてくれればいいんだ」四三に対し、深く頭を下げる嘉納。「君しかおらんのだよ」
「行きます」ついにいう四三。「勝敗のみにこだわらず、出せる力は出し切ってきます」
 感激する嘉納。四三は部屋を出ようとします。そこに可児が嘉納にお金のサインを示します。四三を呼び止める嘉納。嘉納は馴れ馴れしく四三の背中をたたきます。
「これはあくまでも提案なんだが、君が出すっていうのはどうかな」
 あっけにとられる四三。お金を体育協会が出すということが、君を追い込んでいるのではないか、と嘉納はいいます。四三が自分の金でストックホルムに行くのなら、勝とうが負けようが君の勝手だ。国を背負うだの負けたら切腹だのと頭を悩ますことはない。嘉納の口車に納得してしまう四三。はりきってストックホルムに行く決意をします。そして熊本の実家に金を無心する手紙を出すのです。
 一方、若き日の古今亭志ん生である美濃部孝蔵。名人、橘屋円喬に弟子入りして、師匠を乗せて人力車を引いていました。
「耳で覚えちゃだめよ。噺はね、足で覚えるんだ」
 意味のわからない孝蔵。実際に歩いてみないと、落語の中の人間の気持ちがわからない、と師匠は教えていたのでした。
 夢に向かって走る四三と孝蔵。二人は夜の日本橋ですれ違うのでした。その時ちょうどあがる花火。二人の人生を照らし出します。