日本歴史時代作家協会 公式ブログ

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大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第10回 真夏の世の夢

 金栗四三(中村勘九郎)ら、オリンピックに参加するための一団が日本を出発して二週間。一行はストックホルムの地にいました。
 夏のストックホルムは白夜で、夜でも日が沈みません。
 四三ら日本人は、西洋の記者たちに興味を持って迎えられます。西洋人たちは日露戦争で勝利した日本に高い注目を持っていたのです。
 そして四三は、ポルトガル人のマラソン選手に出会います。名前はラザロ。四三に握手を求めてきます。闘志をむき出しにラザロと握手をかわす四三。
 四三と、短距離走の代表である三島弥彦(生田斗真)は白夜に苦しめられます。ろくに睡眠もとれません。
 四三と弥彦は練習を重ねてゆきます。四三はマラソンのコースを走り、弥彦はスタジアムで走ります。二人は孤独に苦しめられるようになります。監督の大森兵蔵(竹野内豊)が胸の病で臥せっており、練習を指導できる状態になかったのです。ほかの国の選手たちは数名が一団となり、互いに批評を加えて訂正しあいます。こうして練習の効果を確実に上げていきます。
 アメリカ、フランス、ロシアなどの選手が現地入りし、練習の場はますますにぎやかになっていきます。
 そんな時、四三はマラソン競技のライバル、ポルトガル人のラザロに再び話しかけられます。ラザロは四三のはいていた足袋(たび)に興味を持ったのでした。四三の真摯に、そして気取らずに意思を伝えようとする様子は、次第にほかの国の選手も引き付けていきます。四三はラザロに足袋をプレゼントします。ラザロは喜びのあまり四三に抱きつきます。すっかり打ち解けた二人。四三は皆の人気者になり、四三の足袋を他国の選手たちも欲しがります。
 練習を始めて十二目。とうとう弥彦は参ってしまいます。
「もう限界だよ」
 と四三にこぼします。練習に誘おうとする四三。実は弥彦は、四三に嫉妬もしていたのでした。新聞を持ってきます。それはどれも四三の記事ばかりで、弥彦の名前はどこにもありません。
 トイレの便器さえ弥彦は気にします。当てつけのように高い。小便もつま先立ちでしなければならない。
「お前らが、足の長い西洋人に勝てるわけがないと笑わられている気になるよ」
 四三は監督の大森に助けを求めます。しかし大森は病状がひどく、弥彦の面倒を見るどころではありません。
 途方に暮れる四三。再び弥彦の部屋を訪れます。弥彦は窓から身を投げようとしていました。慌てて止める四三。四三は必死で説得します。
「われらの一歩は、日本人の一歩ばい。早かろうが遅かろうが、俺らの一歩には意味があるったい」
「すまん」
 と謝る弥彦。二人は抱き合うのでした。
 翌日からやる気を取り戻す弥彦。四三も練習を手伝います。一緒に走ったりタイムを計ったりします。病状の回復した大森も合流し、弥彦はタイムを上げていきます。
 スウェーデンの夜が完全になくなります。スウェーデン人はこのころ広場に柱を立て、踊りあかします。「夏至祭」と呼ばれる行事です。
 この陽気なお祭りの声と白夜に、四三と弥彦は眠れません。ガイドも二人にあきらめるように言います。
「俺が言うてきましょ」
 四三はホテルを出て、踊る人たちに呼びかけます。しかし喜び楽しむ人々は、四三の声に耳を貸そうとしません。さらに四三と弥彦に、日本の歌を歌うように要求するのです。
 四三と弥彦は人々に壇上へと上がらせられます。
 四三は決意し、歌い始めます。それはスウェーデンの人々が期待していたような陽気な歌ではありませんでした。四三の歌いはじめたのは「きみがよ」でした。四三の真剣な様子に聞き入る人々。やがて弥彦も声を合わせます。
 歌が終わると、人々は静まり返ります。やがてまばらに始まる拍手。歓声へと変わっていきます。そして人々の中に加納治五郎(役所広司)の姿があったのです。選手団を率いるべき加納が、ついにストックホルムに到着したのでした。
 オリンピック開会式の打ち合わせが行われます。国旗を弥彦が、プラカードを四三が持つことが決められました。しかしプラカードの表記について、四三は納得しません。英語でJapanと書くことを提案する大森に対し、四三は漢字で「日本」と記すことを主張するのでした。