日本歴史時代作家協会 公式ブログ

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大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第12回 太陽がいっぱい

 マラソン競技当日になりました。
 日本の熊本では、スヤ(綾瀬はるか)が金栗家に来ていました。四三の兄の実次(中村獅童)は時計をスエーデンにあわせています。四三への応援の宴をすることをスヤが提案します。
 ストックホルムではネクタイの正装にて四三は宿を出発します。監督の大森(竹野内豊)は病状が悪化していましたが、妻の安仁子(シャーロット・ケイト・フォックス)の制止を振り切り、四三とともにスタジアムに向かいます。
 しかし四三は市電を間違えてしまいます。大森を連れてでは、四三は走って行くことはできません。道ばたに座り込む大森。四三は大森を背負ってスタジアムに向かいます。
 スタジアムに着く四三。マラソン競技に挑む他国の選手たちは、もう準備を整えています。四三はあわてて着替え始めます。競技に出場するため、他国の選手たちは控え室を出て行きます。取り残される四三。あわてて着替え終わり、フィールドに駆け上がります。スタジアムを埋め尽くす観客にしばし圧倒される四三。審判員に誘導され、四三はマラソン競技のスタート地点につくことができます。
 すぐに鳴るスタートの合図。四三は足袋(たび)調整がうまくいかず、一人出遅れます。選手の一団はスタジアムをあとにします。
 熊本ではスヤが、マラソンの始まっている時間だと気づきます。あわてて祈りを捧げる兄の実次。皆、口々に四三の名前を叫びます。スヤは応援のために「自転車節」を歌い始めるのです。
 ストックホルムの気温は三十度以上。舗装路から熱気が跳ね返ってきます。出だしで張り切りすぎ、息のあがった選手たちを四三は次々に抜いていきます。
 四三は調子を上げていきます。給水所の水も取ろうとしません。
「こりゃいけるばい」
 と手ごたえをつかみます。
 四三には故郷の応援する人の姿が見えていました。兄の実治。そして東京の師範学校の同級生たち。車引きの清さんや街の人たち。
 ところが四三は突然ふらつきます。コースに立ち止まってしまいます。気合を入れなおしてレースをつづける四三。強い太陽が照り付けます。
 やっと給水所で水を飲む四三。二つ目の水を頭にかけます。
 次々と選手が倒れ、棄権してゆきます。日差しと暑さにやられてしまったのです。
 四三はコース上に膝をつきます。そして幼い自分の幻を見るのです。幼い四三は今の四三を励まします。
 幼い四三に励まされた四三は、立ち上がります。再び闘志を燃やし始めます。
 折り返し地点を回る四三に野心が沸き起こります。下り坂にペースを上げ、次々と他国の選手を抜いていきます。給水所で差し出される水も目に入りません。ついにライバルで友人でもあるポルトガル代表のラザロを抜き去ります。
 森のコースを抜けた時のことです。太陽にさらされた四三はふらつきます。体に力が入らなくなってきたのです。それでも走る四三。ついにコースに倒れこみます。幼い四三か再び現れて四三を慰めます。幼い四三は走り去り、四三はその後を追います。
しかしそれは間違ったコースでした。見つけたラザロが声を掛けますが、四三は戻りません。
 一位の選手がスタジアムでテープを切ります。二位、三位の選手も到着。スタジアムで観戦していた加納治五郎(役所広司)は、記録を見て呆れます。四三の記録より四分も遅いのです。
 しかし四三は帰ってきません。加納は目の前を通り過ぎた選手が最後だと聞かされます。そして途中棄権した選手の中に、日本人はいませんでした。ゴールもしていない、棄権もしていないとい
うことは
「まだ走っているということだろう」
 と加納は言います。
 加納たち一行は、四三を探し回ります。スタジアム、病院、コースなど。どこにも見つかりません。四三は消えてしまったのです。
 白夜の夜に、加納たちは宿舎に戻ってきます。捜索願を出すことを検討していました。加納は東京にレースのことを電報で伝えようとします。「棄権」と。「失踪」では大事になってしまうからです。
 四三は目を覚まします。そこはベッドの上でした。四三は宿泊していた宿の、自分の部屋のベッドに寝ていたのです。それを見つけて驚く加納たち。四三は
「すいまっせん」
 といいます。自分でもどうして部屋に帰っていたのか、記憶がなかったのです。四三は加納に言います。
「調子も良くて、スピードもどんどん出て、どんどん楽しくなって、いける、いける、思うたばってん」
 しかしそれ以上四三は言葉が続きません。
 ガイドの青年が言います。日射病です。われわれがここに連れて帰ってきました。
「すいっまっせん」
 四三はたたそれを繰り返すばかりでした。