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『映画に溺れて』第31回 怪談 蚊喰鳥

第31回 怪談 蚊喰鳥

平成十二年八月(2000)
銀座 シネパトス1

 

 低予算ながら密度の濃い時代劇である。主な登場人物は小唄の師匠、その情夫の遊び人、師匠に横恋慕の按摩、三人だけ。三人が三人とも善人とはほど遠い。
 師匠のところへ金をせびりに来る情夫は元は家元の息子だが、勘当されて、ずるずると師匠と関係を続けている。
 小金をため込んでいるらしい按摩、これが師匠に惚れてねちねちと迫る。そこで師匠と情夫がはかり、按摩をたぶらかし、金を手にいれようとする。が、按摩もしたたかで、あっという間に師匠とねんごろになり、亭主気取り。入り浸っていた情夫は出入り禁止となる。
 そうなると、情夫は我慢できず按摩を叩き出す。按摩も一筋縄で行かず、大金を渡すから師匠を譲ってくれとの談判。
 金ほしさに情夫は師匠を言いくるめ、按摩は師匠とまた暮し始める。が、約束の金を出そうとはしない。とうとう情夫と師匠が按摩を毒殺、隣の寺の埋め立て予定の井戸に投げこむ。ところが、死んだはずの按摩が出てきて。
 最後は、三人の死骸に筵が被せられて、役人が取調べている。いったい何が起こったのか。怪談というよりも人間の怖さ。
 小唄の師匠が中田康子。その情夫が小林勝彦。按摩が船越英治。芸達者の船越が卑屈になったり強気に出たりしながら師匠に迫る場面、師匠の中田康子もぞくっとした色気でそれにこたえる。申し分ない出来。

 

怪談 蚊喰鳥
1961
監督:森一生
出演:船越英二、中田康子、小林勝彦