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『映画に溺れて』第46回 築城せよ!

第46回 築城せよ!

令和元年五月(2019)
神泉 ターンテーブル

 

 戦国時代の武将が現代に甦り、城を建てるファンタジーである。劇場公開十年目にして、ようやく渋谷区神泉にあるレストラン、ターンテーブルの映画祭で観ることができた。
 過疎化の進む田舎町で、城跡の石垣を整備し保存しようとするグループと、そこに大企業の工場を誘致し雇用と税収を図ろうとする町長一派とが対立している。
 城跡で行われる町民集会の前夜、見回りに来た町役場の若い男性職員、大工の棟梁、ホームレスの三人に、戦国時代に憤死した領主恩大寺隼人将とふたりの家臣の魂が憑依する。
 職員の肉体を借りた隼人将は、町民集会の場でこの地に城を築くことを宣言。これに城跡保存グループが賛同。棟梁の娘で工科大学の建築科に通うナツコが父の憑依を解くため、渋々ながらも築城のリーダーに指名され、短期間で仕上げられる素材として段ボールが選ばれる。
 地元民や工科大学の学生の協力で、次々と段ボールが集められ、城が出来上がっていく。
 一方、町長は城の完成を阻止せんと、城攻め祭を急遽企画し、段ボール城の破壊を企てる。
 この映画の面白さは、CGではなく実際に一万枚以上の段ボールを集めて、愛知県猿投の現地に高さ二十五メートルの城を建てたこと。映画の中の城造りが、そのまま市民や学生の協力による映画作りに重なっているのだ。
 隼人将が憑依する役場の職員に歌舞伎の片岡愛之助、ナツキに海老瀬はな、町長に江守徹、大工の棟梁に阿藤快、役場の意地悪な上司がふせえりで、コメディ色の強いオカルトファンタジーとして楽しめる。

 

築城せよ!
2009
監督:古波津陽
出演:片岡愛之助海老瀬はな江守徹阿藤快藤田朋子津村鷹志木津誠之ふせえり