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『映画に溺れて』第80回 ラルフ一世はアメリカン

第80回 ラルフ一世はアメリカン

平成十四年十二月(2002)
東京 某公民館視聴覚室

 

雨上がりのバッキンガム宮殿。庭園に王族一同が集まり記念撮影。ストロボが光った瞬間、壇上に電流が走る。英国王とその一族が全員感電死というショッキングな幕開きはほとんどモンティパイソン的ジョーク。
 王宮ではさっそく王位継承者の調査が行われる。
 場所は変わってアメリカの酒場。ラウンジ歌手のラルフが受けない歌で場をつないでいる。この下品な歌手の祖母が、かつてアメリカに遊学中の英国王子との間に男の子を生んでいた。それがラルフの父であり、その父の亡き今、途絶えた大英帝国国王の血を受け継ぐのがラルフただひとりなのだ。
英国に迎えられ、教育係セドリック卿から王としての指導を受けるが、アメリカの庶民と英国王室のマナーとのギャップがギャグとなる。
上院議員のパーシバル卿はあんな男は王としてふさわしくない。いっそ、スチュワート家に王位を戻すべきだと主張する。パーシバルはスチュワート家の末裔であり、自分が王になりたい。
策を弄しすぎたパーシバル卿は墓穴を掘り、ラルフ王はストリッパーと結婚するために王位をもうひとりの王位継承者に譲る。教育係のセドリック卿は身分も低く、老いて子供もないために王位を辞退していたが、彼こそもうひとりの継承者であった。
ストリッパーと結婚したラルフは公爵に叙せられ、公爵親衛隊というバンドを組んで音楽活動をつづける。
荒唐無稽なストーリーながら、細部はリアルで、笑いもきちんと作られている。その後、アン・ハサウェイ主演で作られた『プリティプリンセス』は、アメリカの冴えない女子高校生がヨーロッパの王国の王位継承者だと知らされる話だが、ほとんど同様のアイディア。

 

ラルフ一世はアメリカン/King Ralph
1991 アメリカ/公開1991
監督:デイヴィッド・ウォード
出演:ジョン・グッドマンピーター・オトゥールジョン・ハート、カミール・コドゥリ、リチャード・グリフィスジョエリー・リチャードソン