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大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第25回 時代は変わる

 今回から「いだてん」は第二部になります。
 関東大震災の復興もままならないまま、嘉納治五郎役所広司)はパリオリンピックの参加を断行します。金栗四三中村勘九郎)は現役を引退していましたが、予選大会で伴奏者として教え子を励まして走るうちに、ゴールのテープを切ってしまうのです。そうして34歳にして、四三は三度目のオリンピックに出場することになるのです。
 第二部の主人公である田畑政治阿部サダヲ)は、東京帝大(現在の東大)を卒業し、朝日新聞社の面接を受けにやってきていました。面接にて水泳の場面をまくしたてる田畑。希望の部署を聞かれると、「政治部」です、と答えます。しかしなおも水泳の話を始める田畑。
「日本に一年中泳げる温水プールを」
 と言いかけて、飲もうとした水にむせます。面接官の緒方竹虎リリーフランキー)は田畑に聞きます。君の仲間や友達が良い(水泳)選手なのはわかった。
「君は何なの」
 緒方のこの質問に詰まる田畑。君自身は泳がないのか、という社長の質問に、田畑は病気をして、医者に泳ぐことを禁じられていることを伝えます。社長が本当に希望は政治部なのかと確認します。「はい」と答えた後に田畑は言います。
「でも、水泳は続けますよ。日本を世界レベルにするまでは」あっけにとられる社長と緒方。田畑は言い放ちます。「いずれ、世界一になります」
 田畑が帰った後、社長と緒方は話し合います。
「台風のような男だったな」
 と、感想をもらす社長。
「頭に口が追いついていない、といったふうでしたな」
 と緒方も応じます。そして
「記者には不向きでしょう」
 と、田畑の書類を「不合格」の箱に入れます。ところが社長は何か気になるのです。
「顔が良いから採ってやるか」
 と笑います。田畑の書類は「合格」の箱に移されました。
 朝日新聞に入社した田畑は、政治部長でもあった緒方の指示を受けます。内閣総理大臣、大蔵大臣を歴任した高畠是清(萩原健一)に張り付くように。しかし田畑はオリンピックの記事を見て、運動部に怒鳴り込むのです。そこに受けて出てきたのは校閲部の川野一郎(桐谷健太)でした。田畑は川野に陸上の選手ばかり大きく扱われているとまくし立てます。当然だろう、陸上の方が水泳より上なんだから、と答える川野。川野は金栗四三の弟子だったのです。第一回の箱根駅伝のランナーでもありました。
 パリオリンピックが終了し、選手たちが報告会を開いていました。金栗四三が自分が棄権した様子を語ります。水泳の番になりますが、時間の都合により、結果のみの発表とすることが伝えられます。聞いていた田畑は耐えられず飛び出します。体育協会の陸上びいきは目に余るものがある。田畑の乱入に会場は紛糾します。その場を納めようと、野口源三郎が惨敗の責任を取って辞任すると叫びます。田畑は聞いていません。嘉納治五郎引責辞任を求めます。田畑は言います。
「何が逆らわずして勝つだ。逆らってでも勝て、馬鹿野郎め」
「彼は口がいだてんだね」
 と笑う嘉納治五郎。何がおかしい、と、詰め寄る田畑。田畑は嘉納に投げ飛ばされてしまいます。投げられた田畑は言います。
「やいじじい。嘉納治五郎に伝えろ。水泳は体協から独立する。援助も受けん代わりに、指図も受けんとな」
「よかろう。好きにしたまえ」
 と、嘉納は答えます。
 田畑は帝大工学部を水泳連盟の拠点とします。
「これからは、選手選考も自分たちでやる」
 と、張りきる田畑。新聞記者の仕事をそっちのけで、水連に入り浸ります。やがて工学部の部屋に、謎の入り口を見つけます。はしごを下りてみるとそこにはなんと巨大なプールがあったのです。工学部の船舶実験用の水槽でした。見つけちゃったな、という田畑。長さも20メートルはあります。
 そのころ陸上連盟も発足し、体協から独立しました。体協は単なる統括団体となり、人の出入りもまばらになります。
 仕事はたいしてできないが、どういうわけか田畑は上司にかわいがられました。ある夜、上司の緒方に、飲みに誘われます。田畑はその店が気に入りません。
「なんでこんな場末のドブ臭い店で、ウイスキーなめてんですか。ママ(薬師丸ひろ子)もなんかしょっぺー女だし」
 しかし緒方がこの店での出会いをきっかけに特ダネを手にした話を聞くと、後日、田畑は一人で店を訪れるのです。その時ママはタロットカードで占いをしていました。田畑の様子を見るママはジョーカーのカードを手に取っていました。ママは強引に田畑の手相を見ます。そして涙を流すのです。気になる田畑はママを問い詰めます。
「30で死ぬと出ています」
 と答えるママ。田畑には心当たりがあったのです。田畑の家は代々男が早死にしていたのでした。
「30って、あと二年しかないじゃんねー」
 とぼやく田畑。
 田畑は寄席にて、美濃部孝蔵山本未來)の落語を見ていました。浜松で孝蔵にあったことを思い出す田畑。同時に孝蔵に自分の財布を持って行かれたことも思い出すのです。
 帝大工学部では温水プールが完成していました。はしゃぐ田畑と水泳選手たち。
「お前たち全員、オリンピックに連れて行くぞ」
 と、叫ぶ田畑。
 田畑は選手を引き連れて、体育協会に乗り込みます。水泳に12人のエントリーを要求します。陸連の連中も来ていました。15人の参加を要求します。第二代大日本体育協会会長の岸誠一(岩松了)は、勝手にやってくれ、と言い捨てます。
「金も自分で集めてきたらどうだ」
 と、田畑たちに言います。
「上等だ、馬鹿野郎め」
 そう叫ぶと田畑は体協を後にするのでした。
 朝日新聞社会部に電話がかかってきます。
「あんたんところの若い者が来とるんだがね」
 なんと大蔵大臣の高橋是清萩原健一)からでした。田畑は髙橋の邸宅を訪ねていたのです。
 場面変わって体育協会。費用の捻出に頭を抱えていました。嘉納が言い出します。
「じゃいっそやめるか。オリンピック出るのやめよう、な。どうせ勝てない。勝てなきゃ文句言われるのは体協だ」
 そこへ田畑がやってくるのです。重い包みをかかえて。包みの中身はなんと金でした。この金をどこで、と問われると、
「若者のために使うと言ったらくれました」
 と田畑は答えます。与えてくれたのは大蔵大臣の髙橋是清だったのです。