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『映画に溺れて』第101回 シャーロック・ホームズの冒険

第101回 シャーロック・ホームズの冒険

昭和四十九年十月(1974)
神戸 三宮 ビック映劇

 

 世にシャーロック・ホームズ好きはたくさんいて、ホームズ好きになったきっかけを聞くと、たいていの人は子供の頃、学校の図書室、図書館などで子供向きのホームズ全集を読み、そこからのめり込んで今に至るという。
 ところが、私は子供のころ一度もホームズを読まなかった。私がホームズを好きになったのは大学に入ってからで、それも本ではなく、映画なのだ。
 ビリー・ワイルダー監督の『シャーロック・ホームズの冒険』である。神戸の二本立てで観て、いっぺんにホームズ酔心者となった。
 ワイルダーなので、かなりコメディ路線。現代の銀行の金庫に眠るブリキ箱。それが開かれるや、秘められた未発表事件の原稿が現れ、舞台はいっきに十九世紀末、ガス灯と辻馬車のロンドンへ。
 記憶をなくした謎の美女がベイカー街を訪れる。彼女の夫がなにかの陰謀に巻き込まれて失踪したらしい。その謎を探るためにホームズ、ワトスン、美女の三人がスコットランドネス湖まで出向くと、そこで意外な展開が。
 感情を抑える訓練を積み重ねてきた推理の天才である名探偵の恋。不器用で古風なロマンス。ジュヌビエーブ・パージュ演じるこの美女が、実は一番の謎なのだが。
 ドラキュラで有名なクリストファー・リーが兄のマイクロフト。
 事件終了後、どっと落ち込むホームズ。これはまるでもうひとつの『ボヘミアの醜聞』ではないか。
 映画館を出て、私はさっそく書店に行き、ホームズ本を探すと、幸運なことにこの映画のノベライズ『シャーロック・ホームズの優雅な生活』が創元推理文庫から出ていて、さっそく読了。続けて東京創元社の文庫、阿部知二訳でホームズを読み耽った。私が最初に読んだホームズは、だから正典ではなく映画のノベライズであったのだ。
 ただし、このノベライズの表紙、ネタバレになっているのでご注意。

 

シャーロック・ホームズの冒険/The Private Life of Sherlock Holmes
1970 アメリカ/公開1971
監督:ビリー・ワイルダー
出演:ロバート・スティーブンス、コリン・ブレイクリー、ジュヌビエーブ・パージュ、クリストファー・リー