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『映画に溺れて』第114回 アナと世界の終わり

第114回 アナと世界の終わり

令和元年六月(2019)
新宿 新宿武蔵野館

 

 青春学園もので、ミュージカルで、しかもゾンビ映画。このアイディアだけでうれしくなるが、なによりもミュージカルとして出来がいい。
 アナは高校生だが、卒業後は大学には進学せず、世界を旅行したいと思い、旅費を貯めるためにアルバイトに精を出す。が、クリスマスイブにそれを知った父親と口論。ジョンはアナの幼馴染でクラスメートでもあるが、善良で気が弱く、自分の思いがアナに届かないのを嘆く。ステフは短髪で男装の少女、学校ではみんなに溶け込まず浮いている。そして三人が学校で歌い出す。こんなところ、早く抜け出したいと。いきなりわくわくする展開。
 新種のウィルスで世界各地がパニックとのニュースが流れるも、高校生たちは食堂で元気に歌って踊る。恋愛は歌や小説や映画のようにはいかない。ハリウッド映画のようなエンディングはないんだと。そんな中でいつもいちゃついている相思相愛のリサとクリスが抱き合って、青春映画そのものの愛を歌う。物陰から不快そうに若者たちを見るマニュアル通りの教条主義教頭。これが横柄でいやなやつなのだ。
 やがて、この町にもゾンビが出現し、襲われた者もゾンビウィルスに感染してゾンビとなるため、徐々にゾンビが増え続ける。
 クリスマスの朝、気持ちよく歌いながら学園に向かうアナの背景で、すでにゾンビがうようよ。
 ようやく事態に気づいたアナはジョンやステフやクリスとともに、学校に避難している仲間のもとへ急ぐ。救援の軍隊もすでにゾンビウィルスに冒され、町はゾンビだらけ。
 途中でかつてアナとつきあっていたらしい不良少年ニックと合流し、次々と襲いかかるゾンビと戦い、ようやく学校にたどりつくのだが。
 ゾンビ映画の約束事を踏まえた上での、コメディ色たっぷり、上出来ミュージカルである。


アナと世界の終わり/Anna and the Apocalypse
2017 イギリス/公開2019
監督:ジョン・マクフェール
出演:エラ・ハント、マルコム・カミングス、サラ・スワイヤー、クリストファー・レボー、マルリ・シウ、ベン・ウィギンス、マーク・ベントン