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『映画に溺れて』第133回 タイム・アフター・タイム

第133回 タイム・アフター・タイム

昭和五十六年九月(1981)
新宿 新宿ビレッジ2

 

 H・G・ウェルズといえば、十九世紀末に『宇宙戦争』『透明人間』『モロー博士の島』など、様々なSF小説を書いたイギリスの作家であるが、その代表作のひとつが『タイムマシン』である。そして、ウェルズが本当にタイムマシンを発明していたというのが、この映画『タイム・アフター・タイム』なのだ。
 一八八〇年代のある日、ウェルズは友人たちを招いて時間を移動する装置、タイムマシンを披露する。そこへ警官が現れ、切り裂きジャックが近くに逃亡したと告げる。警官が室内に入ると、ウェルズの友人のひとりである医師が、タイムマシンとともに消えている。その医者こそ、連続猟奇殺人魔であった。
 自動操縦で戻ったタイムマシンの記録では、切り裂きジャックは一九九七年に移動したと思われる。自分の落ち度で殺人鬼を平和な未来へ送ってしまったことを悔い、ウェルズは自分の手で切り裂きジャックの犯行を阻止するべく未来へと旅立つ。
 ところが、着いた場所はイギリスではなく、アメリカなのだ。そこは想像した平和な未来とはまるで違う暴力や殺人の絶えない世界だった。
 ウェルズは出会った銀行員の女性と仲良くなり、彼女の助けを借りて殺人鬼を追うのだが、切り裂きジャックは犯罪が蔓延する世界を楽しんでいた。
 イギリスのタイムマシンがなにゆえ未来のアメリカに行ってしまうのか、博物館で展示されているタイムマシンの中からウェルズが出て来たり、簡単に自動車が運転できたり、いろいろと雑な場面も多いが、ウェルズ本人が過去から現代に来るというアイディアはなかなか面白い。
 監督は小説『シャーロック・ホームズ氏の素敵な昌険』で売り出したニコラス・メイヤーH・G・ウェルズはホームズの同時代人なので、あの小説の副産物として、こんなアイディアが浮かんだのかもしれない。メイヤーの小説はハーバート・ロス監督で『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』として映画化されている。

 

タイム・アフター・タイム/Time After Time
1979 アメリカ/公開1981
監督:ニコラス・メイヤー
出演:マルコム・マクダウェル、デビッド・ワーナー、メアリー・スティーンバーゲン