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『映画に溺れて』第138回 ある日どこかで

第138回 ある日どこかで

昭和六十年九月(1985)
大井 大井ロマン

 

 タイムマシンも使わず、魔法使いの手も借りず、タイムスリップする映画も実はけっこうあるのだ。私が大好きな一本がリチャード・マシスンの小説の映画化、ロマンチックなファンタジーある日どこかで』である。
 封切りで全然話題にならず、あっという間に終わってしまい、だから、私も知らなかった。ところが、公開終了後、一部のファンの間で徐々に評判が高まるというカルト映画で、私が観たのは三年後、大井にある小さな名画座だった。
 そして、観終わった後、しばらくぼんやりするくらい、酔いしれた。
 若い劇作家が、ぶらりと旅に出て、学生時代に暮らした町を訪れる。そこの古い大きなホテルに泊まり、何気なく展示されている記念品を見ていて、一枚の写真が目にとまる。なんて美しい人だろう。写真だけで一目惚れしてしまうのだが、その写真、何十年も昔、二十世紀初頭に活躍した舞台女優のものだった。
 彼女のことを調べると、すでに故人。でも、なんとしても彼女に会いたい。ならどうするか。
 彼女が活躍した過去へ戻るしかない。二十世紀初頭に。
 過去へ戻る方法は、ひたすら念じること。昔の洋服を手に入れて着替え、あの時代、彼女がそこに滞在していた日に戻りたい、戻りたい、戻りたいと。
 すると、ある朝、彼は二十世紀初頭の同じそのホテルにいる。
 そして、女優もまた滞在している。彼はなんとかして彼女に近づき、自分の思いを伝えるのだ。
 主演はかつて『スーパーマン』で一世を風靡したクリストファー・リーヴ。女優役がジェイン・シーモアラフマニノフパガニーニの主題によるラプソディ』が効果的に使われていて、私はサントラのCDを購入した。この曲はその後『恋はデジャ・ブ』など、他の映画でもときどき流れている。

 

ある日どこかで/Somewhere in Time
1980 アメリカ/公開1981
監督:ヤノット・シュワルツ
出演:クリストファー・リーヴ、ジェイン・シーモアクリストファー・プラマー