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『映画に溺れて』第156回 クイーンコング

第156回 クイーンコング

平成十三年十月(2001)
渋谷 シネクイント

 

 一九三三年の『キングコング』はその後、続編が作られたり、リメイクされたり、アニメになったり、日本でゴジラと戦ったり、いろんな形で作られ続けているが、一九七六年にディノ・デ・ラウレンティスの製作、ジョン・ギラーミン監督でのリメイクが作られた際、それにそのままあやかった低予算のB級作品が『クイーンコング』である。
 主演のロビン・アスクウィズはイギリスの三流艶笑コメディ『どっきりボーイ』シリーズに主演していた。
 女流映画監督がアフリカで映画の撮影を企画する。ロンドンの下町でケチな万引きをしている頭の弱そうな青年をスカウトし、無理やり船に乗せてアフリカまで連れて行く。撮影隊は全員女性。船の乗組員もみんな女性。アフリカの小国も変な片言をしゃべる女王が支配するアマゾンの女性国。女王はミスコンテストの女王の扮装。アフリカなのに住民は水着の白人美女ばかりというお色気路線。
 ここで、密林の神への生け贄として青年が選ばれ、巨大な雌のゴリラ、クイーンコングにさらわれる。コングは着ぐるみに人間が入ったもの。途中で格闘する恐竜など、ほとんど張りぼて。このチャチさは、低予算を逆手に取った洒落だと思う。撮影隊が青年を助け出し、コングを生け捕りにして、ロンドンへ連れ帰る。
 オリジナル通りの見世物の場。王室から女王陛下もクイーンコング見物に列席。観客の汚い野次に怒ったコングが鎖を引きちぎって暴れだし、エンパイヤステートビルではなく、ロンドン塔へ昇る。そして、最後はコングへの愛情を確認した青年と共に故郷のアフリカへと帰ってめでたし。
 オリジナルストーリーの男女を逆にしただけの安直さ。
 日本語吹き替え版での上映で、声が懐かしい広川太一郎
 少々悪乗りだが、わざわざこのような映画を作った努力は好ましい。

 

クイーンコング/Queen Kong
1976 イタリア・イギリス/公開2001
監督:フランク・アグラマ
出演:ロビン・アスクウィズ、ルーラ・レンスカ