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『映画に溺れて』第163回 十二夜

第163回 十二夜

平成十年八月(1998)
飯田橋 ギンレイホール

 

 シェイクスピアには男女の双子の子供があったそうだ。だからこの芝居を思いついたのだろうか。
 双子が乗っている船が難破し、助かった妹ヴァイオラは男装し、縁あって貴族オーシーノ侯爵に従僕として仕える。この貴族が思いを寄せる伯爵令嬢オリヴィアへの使者に立つと、令嬢はこの美しい従僕が女とも知らず一目ぼれ。それとなく口説きはじめる。が、ヴァイオラは密かに主人オーシーノへ恋心を抱いている。そんなやりとりのところ、今度は死んだと思われた双子のセバスチャンが現われ、これが従僕のヴァイオラと間違われたために、いろいろとトラブルが起こる。令嬢を慕う気取った執事のマルヴォーリオがからんでさらにドタバタ調に。
 原作はエリザベス王朝時代だが、この映画は衣裳など十九世紀末のヴィクトリア時代の風俗に置き換えている。
 私が初めて『十二夜』の舞台を観たのは一九七〇年代の後半、出口典生の演出で小田島雄志の翻訳、シェイクスピア全作品の上演に挑戦する若手劇団シェイクスピアシアターの公演だった。客席はもう吉本新喜劇以上の大爆笑。
 シェイクスピアというと古典文学であり、伝統芸術と思われがちだが、心地よいせりふと面白い筋立てで観客をひきつける舞台作りの名人だった。
 余談だが、実をいうと私の子供も男女の双子である。二卵性で、とても瓜二つではないけれど。

 

十二夜/The Twelfth Night
1996 イギリス/公開1998
監督:トレヴァー・ナン
出演:ヘレナ・ボナム・カーター、イモジェン・スタッブス、リチャード・E・グラント、ナイジェル・ホーソン、トビー・スティーブンス、ベン・キングズレー