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『映画に溺れて』第178回 マーウェン

第178回 マーウェン

令和元年七月(2019)
日比谷 TOHOシネマズシャンテ

 第二次大戦中、ベルギー上空を飛行中のアメリカ軍人ホーギー大佐はナチスの砲弾によって撃ち落され、川に不時着するも、敵兵に囲まれ絶対絶命。そこへ武装した五人の美女が現れ、ナチスを皆殺しにする。が、よく見るとホーギー大佐の顔はプラスチックのようにつるつるで、関節には継ぎ目が。美女たちもまた、ほとんどバービー人形なのである。
 と、人形を動かして、くわえ煙草でカメラを構える男。ここは彼、マークが自宅の庭に作った六分の一の模型の世界マーウェン。マークは自分の分身である人形のホーギー大佐や彼を慕うバービーたちを使って戦時中の物語を創造し、様々な場面を写真に撮っているのだ。
 現実世界でのマークは記憶障害者である。酒場で五人の男に絡まれ、暴行され瀕死の重症を負い、一命はとりとめたものの、脳の負傷で過去を思い出せず、イラストレーターだった記憶もなく、今は妻や子供にも去られ、近所の食堂で下働きをしながら、人形たちと暮らしている。
 瀕死の彼を助けてくれた女性ウェンディと自分の名前を組み合わせてマークはこの世界をマーウェンと命名した。空想世界でホーギー大佐をつけ狙う五人のナチス兵士は、彼を暴行した五人の犯人たちがそのまま投影されている。バービー人形たちも、それぞれ、負傷後の彼と交流のある女性たちである。
 向かいに引っ越してきた優しそうな美人ニコル。彼女と言葉を交わし、親しくなったマークはさっそく新しいバービー人形を購入してニコルと名付け、美女軍団に加えるのだが。
 人形たちが動き、しゃべり、銃撃戦を繰り広げる空想場面の特撮、さすがにロバート・ゼメキス、見事である。そして、この映画は実話が元になっていて、マーク・ホーガンキャンプは今も人形たちの冒険物語を写真に撮り続けているとのこと。

 

マーウェン/Welcome To Marwen
2018 アメリカ/公開2019
監督:ロバート・ゼメキス
出演:スティーブ・カレル、レスリー・マンダイアン・クルーガー、メリット・ウェバー、ジャネール・モネイエイザ・ゴンザレス、グウェンドリン・クリスティー