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『映画に溺れて』第197回 アメリ

第197回 アメリ

平成十四年一月(2002)
池袋 テアトル池袋

 

 主人公のアメリは内気で不器用、周囲の人となかなかうまく溶け込めない。
 彼女がある日、TVでダイアナ妃事故死のニュースを見て、びっくりしたとたん、化粧品の蓋が転がり、壁の隙間に入る。そこには子供のおもちゃが入った宝箱が。箱を見つけたアメリ、アパートの前の住人を探り当て、匿名で宝箱を返す。
 子供のころに壁の穴に隠した宝物の箱が突然目の前に現れ、狂喜する中年男。
 それがきっかけとなり、アメリは他人をほんの少しだけ幸福にするいたずらを次々と思いつく。
 アパート管理人の中年女性は、昔、愛人と駆け落ちして事故死した夫から、何十年遅れで届いたラブレターに涙する。
 アメリの実家の父親には、庭からいなくなった置物の小人から世界各国の風景写真が届く。
 やがてアメリはもうひとりの自分によくにた青年ニノに出会う。彼もまた内気で世間とぎくしゃくしていて、駅の証明書用自動写真撮影機の下に捨てられている失敗写真を集めてアルバムに貼るのが趣味という変わり者。
 ニノは失敗写真を収集しながら、ひとつの謎にぶちあたる。いつも決まったハゲ頭の同じ男の写真があちこちの証明写真コーナーに落ちているのだ。この奇妙なハゲ男の正体はいったいなんだろう。
 そして、不器用なアメリのニノへの恋心ははたしてうまく通じるのか。
 普通のラブコメディと比べると、皮肉で、ひねりがきいており、しかも粋で温かく、そこがフランス映画らしい。ふたりの恋をつい応援したくなる。
 隠れていたずらを企むアメリがスカーフとサングラスで扮装する場面、『シャレード』のオードリー・ヘップバーンを思わせる。そういえばオドレイ・トトゥのオドレイは英語ではオードリーだから意識したのだろうか。

 

アメリLe Fabuleux Destin d'Amélie Poulain
2001 フランス/公開2001
監督:ジャンピエール・ジュネ
出演:オドレイ・トトゥ、マチュー・カンヴィッツヨランド・モロー、ドミニク・ビノン