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『映画に溺れて』第212回 ラスト・ムービースター

第212回 ラスト・ムービースター

令和元年九月(2019)
新宿 シネマカリテ

 

 バート・レイノルズの遺作にして、最後を飾る傑作である。彼が演じるヴィック・エドワーズはかつてのハリウッド大スター。数々のアクション映画に主演し、多くのファン、とくに女性に愛された。だが、今は仕事もなく、世間からも忘れられた孤独な老人である。つまり、レイノルズ本人を投影した主人公なのだ。
 ヴィックのところへある日、ナッシュビルの映画祭から特別功労賞の通知と招待状が届く。最初は無視するが、たまたま愛犬の死で気持ちが落ち込み、友人のすすめもあって、気晴らしに招待を受けることにする。が、行ってみると、映画祭とは名ばかりで、ホテルは安宿、会場は田舎町の小さなバー、壁の仮設スクリーンにプロジェクターで映される古い主演作。運転手兼世話係のリルはいかれた若い女で、スター時代の彼を知らず、無礼な振る舞い。地元の映画ファンが大喜びでヴィックを迎えるが、あまりの期待外れに落胆し、深酒をあおり、実行委員の映画マニアたちに悪態をつき、とうとう翌日、映画祭をすっぽかし、リルに命じて空港へと向かう。が、ナッシュビルが生まれ故郷に近いことに気づき、生家や出身大学を訪れ、自分の過去を振り返る。
 スタントマンから出発し、TV俳優となり、映画スターにのし上がった。強気で傲慢で喧嘩っ早かった。無名時代を支えてくれた最初の妻を捨て、五度の結婚。
 金持ちか有名人か、どちらかを選ぶなら絶対に有名でいたい。が、今は金も名声もない老いぼれにすぎない。そんな自分を今でも愛してくれるファンがいる。幸せなことではないか。
 過去の自分と対話する場面では、昔の主演映画『脱出』の川下りの場面に今の老人となったレイノルズを合成して、不自然さがない。
 この映画のあと、レイノルズはタランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に出演予定だったが、撮影前に亡くなった。八十二歳。カルト集団に翻弄される老人の役よりも、やはりこちらの主演作が遺作になって、よかったと私は思う。

ラスト・ムービースター/The Last Movie Star
2017 アメリカ/公開2019
監督:アダム・リフキン
出演:バート・レイノルズ、アリエル・ウィンター、クラーク・デューク、エラー・コルトレーン、ニッキー・ブロンスキー、チェビー・チェイス