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『映画に溺れて』第216回 ドット・ジ・アイ

第216回 ドット・ジ・アイ

平成十六年十一月(2004)
飯田橋 ギンレイホール

 

 ガエル・ガルシア・ベルナルとナタリア・ヴェルベケの共演したスペイン映画。
 実はこの映画、観るまで、全然興味なかった。ただの恋愛映画だろうと思って。飯田橋ギンレイホールの二本立ての一本がこれで、ついでに観たのだ。
 ナタリア扮する貧しい若いスペイン女性カルメンがロンドンへやって来て、そこで金持ちの優しいイギリス人青年バーナビーと出会い、プロポーズされる。これがジェームズ・ダーシー。彼女もその気になるのだが、結婚式直前、独身最後のキスの相手に選ばれたのがガエル・ガルシア・ベルナル扮するキット。
 カルメンはスペインでつきあっていた異常な男から逃げてロンドンへ来たので、今でもその男の影に脅えている。そして、いつもだれかに付け回されているような気がしてならない。
 優しい金持ちのバーナビーとのプロポーズを受けてからも、キスしたキットが気になって、結局、彼と深みにはまる。ところが、バーナビーとキットは裏でつながっているようで、どうやらキットはバーナビーの指示でカルメンに近づいた様子。自分の恋人をわざと他の男に誘惑させるなんて、とんでもない変態か。
 そう思って観ていると、後半、思いもよらぬトリックが判明するのだ。これには驚いた。が、ネタばれは避けねばならぬ。続きはどうぞ、ご自分で。
 もちろん恋愛映画ではない。あえて言えば、映画そのものを題材にした映画というべきか。
 この映画の中のある登場人物がこんなことを言う。
「人生は映画とは違う。嘘がはびこり、善人は報われず、愛は敗北する」
 はたして、そうなるのか。

 

ドット・ジ・アイDot the I
2003 スペイン/公開2004
監督:マシュー・バックヒル
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ナタリア・ヴェルベケ、ジェームズ・ダーシートム・ハーディ