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『映画に溺れて』第225回 コンゴ

第225回 コンゴ

平成八年一月(1996)
池袋 文芸坐

 マイケル・クライトンの小説『失われた黄金都市』もまた、映画化よりも翻訳を先に読んだ。アメリカの通信衛星企業がレーザー光線に使うためのダイヤモンドをアフリカのコンゴで調査中、先行の調査隊が消息を絶つ。企業から女性技師のカレンがアフリカへ派遣される。これと同行するのが、人語を解するゴリラのエイミーと動物学者のピーター、それに胡散臭い冒険家ホモルカ。
 原作をかなり刈り込んであって、単純な冒険ものとなっている。そのため、クライトン特有のリアリティまで切り捨てられることになって、物足りない。これだけの原作を低予算で作るのは難しい。
 ただし、アフリカの現状や機械工学の発展は現代に設定してあるし、ゴリラに自動翻訳装置を取りつけて言葉を発させるアイデアも映画風でいい。
 コンゴの奥地に古代文明の遺跡があり、これがまるでコナン・ドイルの『失われた世界』を思わせる。先行の調査隊は何かに襲われて全滅した。この地を外敵から守っているのが、その昔、伝説のソロモン王が盗掘を防ぐため、番人代わりに調教し凶暴化させて作った新種の……。
 知性あるゴリラ、ダイヤモンド、失われた世界、まるで三題噺のよう。マイケル・クライトンの小説はずいぶんと映画化されている。が、どうしても原作の面白さに負けてしまう。私が観た中では、やはり『アンドロメダ…』と『ジュラシックパーク』が映像的によくできていたと思われる。

コンゴ/Congo
1995 アメリカ/公開1995
監督:フランク・マーシャル
出演:ディラン・ウォルシュ、ローラ・リニー、アーニー・ハドソン、ティム・カリー