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『映画に溺れて』第251回 決算!忠臣蔵

第251回 決算!忠臣蔵

令和元年十月(2019)
築地 松竹試写室

 忠臣蔵はおそらくわが国ではもっとも有名な物語のひとつだろう。
 元禄十四年、江戸城内で赤穂藩浅野内匠頭高家筆頭吉良上野介に斬りかかった傷害事件。内匠頭は即日切腹、赤穂浅野家は取り潰しとなる。翌元禄十五年十二月、浅野家の浪人四十七名が本所の吉良邸を襲撃して上野介を殺害、その首を高輪泉岳寺の主君の墓に供えた。
 討ち入りは大絶賛され、物語は人形浄瑠璃になり歌舞伎になり、事件から四十七年後に上演された決定版の題名が『仮名手本忠臣蔵』、その後も様々なエピソードが創作され、講談になり小説になり映画やTVドラマとなり、長い年月人々に親しまれている。映画化作品だけでもサイレント時代から数えれば三百本以上とのこと。
 では元禄の赤穂事件、浅野内匠頭の刃傷から城明け渡し、四十七士による討ち入りまでに、実際どれほどの費用がかかったかというユニークな視点から見た忠臣蔵の物語が『決算!忠臣蔵』なのだ。
 五万石の赤穂藩が潰れて、城も江戸屋敷も失い、藩士は浪人となる。諸々整理し、身分禄高に合わせて分配し、残った資金をいかに討ち入り準備に当てたのか。
 もちろん、最初から討ち入りが決まっていたわけではなく、まず城を枕に籠城討ち死に、そこから城明け渡し、主君の弟浅野大学を立ててのお家再興願いなど経過があり、いよいよ再興かなわぬとなっての討ち入り決意である。
 当時の一両を現代の十二万円に換算。妾の手切れ金、江戸への旅費、武器の調達など、出費のたびにテロップで金額と支度金の残高が明示される。
 勘定方に「そんな予算ありまへんで」と言われて「なんでやねん」と不満顔の大石内蔵助赤穂浪士のせりふが吉本コメディを思わせる大阪弁なのも楽しい。


決算!忠臣蔵
2019
監督:中村義洋
出演:堤真一岡村隆史濱田岳横山裕荒川良々妻夫木聡大地康雄、西村まさ彦、笹野高史竹内結子西川きよし石原さとみ阿部サダヲ