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『映画に溺れて』第288回 もしも昨日が選べたら

第288回 もしも昨日が選べたら

平成十八年十二月(2006)
飯田橋 ギンレイホール

 家庭にあるさまざまな電化製品。TVやエアコンなど、それぞれにリモコンがあって、どれがどれか混乱してしまうこともある。
 アダム・サンドラーふんする建築家。家庭には美しく優しい妻、ふたりの子供に恵まれて、幸せな日々。ある日、こんがらがったリモコンをひとつにできないかと、大型電器店へ行く。売り場の裏の倉庫の奥で、リモコン修理しているおじさんがクリストファー・ウォーケン
 このおじさんに勧められるまま、彼は万能リモコンを手に入れる。
 さっそく試すと、電化製品ばかりでなく、自分の周囲のあらゆることに使えるのがわかる。うるさい犬に消音スイッチを向けると、吠え声がしなくなる。妻にわずらわしい用を頼まれると、さっさと早送りしてしまう。文句を言われたら一時停止。
 そうこうするうちに自動早送り機能で、同じような状況は全部飛ばして、便利だ便利だと思っているうちに、いつの間にか、早送りが止まらなくなり、捨てようとしても、このリモコン、返品不能の契約。
 自分でも気がつかないうちに、自動早送りでまたたくうちに老人に。取り返しのつかない過去の場面を再生しても、それはすでに終わった場面で、もとには戻らない。ああ、なんてつまらない人生だったんだと嘆いて。さて、どうするか。
 人生はドラマではない。つまらないわずらわしい部分も含めて大切なんだよ。というファンタジーの佳作。
 この映画の日本語タイトル「もしも昨日が選べたら」というのは、ひょっとして「もしも機能が選べたら」の洒落だろうか。

もしも昨日が選べたら/Click
2006 アメリカ/公開2006
監督:フランク・コラチ
出演:アダム・サンドラーケイト・ベッキンセールクリストファー・ウォーケン