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大河ドラマウォッチ「麒麟がくる」 第一回 光秀、西へ

 1547年.室町幕府末期。武家の頭領である将軍足利氏は、家臣たちの権力闘争と足利家の内紛により、力を失っていました。幕府は弱体化し、争いは各地に伝播していきました。
 京から40里離れた美濃の国。農地を見回っていた明智十兵衛光秀(長谷川博己)は、野盗の襲撃に遭遇します。部下と共に野盗と戦い、なんとかこれを撃退する十兵衛でしたが、野盗の頭は十兵衛の見たことのない武器を最後に放ちます。十兵衛は助けた農民(岡村隆史)から、それが「鉄砲」というもので、堺でしか手に入らないということを聞きます。
 十兵衛は明智城に戻ってきます。事実上の明智城の当主である叔父の明智光安(西村雅彦)に、殿、つまり美濃の支配者である斎藤道三に会う許可を求めますが、出過ぎたまねとはねつけられます。十兵衛は許可なく、道三のいる稲葉山城に向かいます。その門前で待ち、鷹狩りから帰ってくる道三に話しかけようと考えていたのでした。その十兵衛に親しげに声をかけてくるものがいます。斎藤道三の息子、斎藤高政(伊藤英明)でした。十兵衛とは机を並べて学んだ仲です。道三は妻の小見の方の病状が思わしくないため、鷹狩りに出ていませんでした。高政の手引きで十兵衛は斎藤道三(本木雅弘)に会うことができます。
 十兵衛は道三に野盗について説明します。鉄砲を持っていたことも。道三は鉄砲に興味を持っていました。十兵衛は語ります。自分は美濃から外に出たことがない。
「この美濃がどうあれば良いのか、まるで見当がつきませぬ。ただ、はっきりしているのは、この先、野盗は何度も来るということです。そして野盗は、他の国々を知っている。鉄砲を知っている。我々はそれを知らない」
 そうして十兵衛は美濃のために旅をさせてもらいたいと申し出るのです。
「そもそも旅の許しを出して、わしに何の得があるというのか」
 と、道三はいいます。十兵衛は困惑します。道三は十兵衛を残して立ち去ろうとします。十兵衛は道三に食い下がります。
「鉄砲を買うて参ります」
 しかし道三は立ち止まりません。十兵衛はさらにいいます。
「京には立派な医者もいて、様々な難病を治すと聞いております」
 道三の妻のためにその医者を連れてくると宣言します。
「それでいかがでございましょう」
 十兵衛は道三の前に膝をつきます。道三は向き直ります。資金としていくら欲しい、といって笑い、道三は十兵衛に旅の許可を出すのです。
 十兵衛は出発します。旅の途中で堺の武器商人「辻屋」のことを知ります。琵琶湖を船で渡り、比叡山を通ります。その道中、十兵衛は治安の悪さを実感します。
 ついに十兵衛は堺に入ります。その活気に驚き、感心する十兵衛。聞いていた辻屋を訪ねます。辻屋には先客がいました。足利将軍の奉公衆である三淵藤英(谷原章介)たちでした。三淵は辻屋に鉄砲を注文していました。その試し撃ちを見物する十兵衛。しかし三淵は鉄砲という武器が気に入りません。弓矢ならすぐに次の矢を射ることができるというのです。十兵衛は辻屋に鉄砲を求めますが、注文が多く、手に入れるには二、三ヶ月待たなければならないと知らされます。
 三淵たちと入れ替わりに辻屋にやってきた派手な着物の男がいます。三好長慶の家臣、松永秀久(吉田鋼太郎)でした。松永は十兵衛に親しみを持ちます。斎藤道三に憧れを持っていたからです。十兵衛の懐にしまった金も気になる様子でした。
 松永は十兵衛を食事に誘います。酒をしこたま飲ませる松永。十兵衛は松永がしきりに斎藤道三をほめるのが気に入りません。美濃の国のものが、すべて殿に従っているわけではないといい出します。十兵衛はかなり酔っています。
「おぬしは山城守(斎藤道三)様のことをどうおもっておるのじゃ」
 と、問う松永。
「正直に申し上げて、ああいうお方を好きにはなれない」
 けちくさい。何事も損得勘定。などと悪口を並べ立てます。しかし、と十兵衛はいいます。
「好き嫌いで主君に仕えるわけではない。それが難しい」
 その言葉に対し、松永が同意すると、十兵衛は上機嫌になります。そしてそのまま寝てしまうのです。
 翌朝、目を覚ました十兵衛は懐にあるはずの金がなくなっていることに気づきます。しかし書き置きと共に一挺の鉄砲が置かれていたのでした。喜びの声を上げる十兵衛。一路、京に向かいます。
 京は戦乱のため、荒廃しきっていました。人々は住む家もなく、食べるものにも事欠く有様でした。十兵衛は炊き出しを行っている僧侶に、京で一番の名医は誰かと訪ねます。名医は将軍のそばにおり、荒廃した京都にはいないだろう、と僧侶はいいます。僧侶は「望月藤庵」という名医がいたことを思い出します。十兵衛はその場所に行ってみることにします。
 教えられた所に来てみると、十兵衛は藤庵の助手である女性の駒(門脇麦)に出会います。藤庵はいないから帰るようにいわれます。あきらめきれず、駒に訴え続ける十兵衛。駒は少し興味を持ち始めます。美濃の殿様は治療にいくらくれるのかと十兵衛に訪ねます。
「それ相応と」
と、答える十兵衛。ついに駒は藤庵のもとに十兵衛を連れていきます。
 しかし美濃には行かないと藤庵(堺正章)はいいます。
「わしは金では動かん」
 と、豪語します。しかし本当の理由は、貧しい人を助けるために京を離れたくなかったのです。
「わかりました」と、十兵衛はいいます。「私の父は、私が幼き頃、病で亡くなりました。生前の父を知る者は皆、口をそろえて、立派なもののふであったといわれます。その父がよく私に申していたことがあります。大事なのは一つ。ただ一つ。誇りを失わぬことだと」
 十兵衛はそういって去って行くのです。
 その時、盗賊の襲来があり、家々に火がつけられます。十兵衛は盗賊を退けることはできましたが、燃え上がる炎をどうすることもできません。火のついた一軒の家に、少女が取り残されているというのです。水をかぶり火の中に飛び込む十兵衛。少女の救出に成功します。
 少女の無事を喜ぶ人々。十兵衛は誰に感謝されるでもなく、材木に腰を下ろしていました。そこに話しかける駒。十兵衛に礼を言います。駒は自分の子供の頃のことを話し始めます。火事で両親を失い、藤庵に育てられた。火事の中で親と死ぬところを助けられた。ちょうど十兵衛がしたように、一人の武士が火の中に入ってきて連れ出してくれた。その武士は泣き止まない駒を慰めていった。
「いつかいくさが終わる。いくさのない世の中になる。そういう世を作れる人がきっと出てくる。その人は、麒麟を連れてくるんだ。麒麟というのは、穏やかな国にやってくる不思議な生き物だ」
 十兵衛はいいます。
「旅をして、よくわかりました。どこにも、麒麟はいない。何かを変えなければ。誰かが。美濃にも京にも、麒麟は来ない」
 そして藤庵は言い訳を並べ立て、美濃に行くことを申し出るのでした。