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『映画に溺れて』第307回 夜と霧

第307回 夜と霧

平成十四年一月(2002)
東中野 BOX東中野


これぞ究極のドキュメンタリー。ホロコーストの古典的記録映画である。
 第二次大戦中、ナチスドイツはユダヤ人を効率的に抹殺するため、占領下の東欧各地に強制収容所を作った。
 その建設に利権を求める土建業者たち。
 収容所が作られると、次々とドイツ本国および占領地のユダヤ人が検挙され、貨物列車に詰め込まれ、送りこまれる。列車内の劣悪な輸送状態に辿り着く前に死んでしまうユダヤ人も多い。
衣服をはぎ取られ、家畜小屋のような場所に入れられ、強制労働させられる。
 ユダヤ人を監督するのは、刑務所から集められた凶悪犯たち。
 病院もあるが、そこは病人を治療する場所ではなく、ユダヤ人を生きたまま解剖したり、毒薬の開発に役立てる生体実験室だった。
 そして、大量のユダヤ人が次々に送られて来て、選別され、ガス室で処理される。
ナチスはおびただしい死骸の有効利用も考案した。毛髪は鬘やクッションの材料、皮膚は皮革製品、脂肪は石鹸へと作り変えられる。
 処理後のユダヤ人の首がいくつもバケツに投げこまれている。人間ではなく、まるで家畜の解体工場のようだ。
連合軍がやって来て、おびただしいユダヤ人の死体が埋葬される。大きな穴にブルドーザーで落とされて。
 本物の映像が、これらの事実を語っていることの凄さ。私が観たBOX東中野での上映はノーカットオリジナル完全版とのことである。
 北杜夫の小説『夜と霧の隅で』はこの当時のドイツに留学した日本人医学生の物語である。


夜と霧/Nuit et Brouillard
1955 フランス/公開1961
監督:アラン・レネ
ドキュメンタリー