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『映画に溺れて』第317回 カンタベリー物語

第317回 カンタベリー物語

昭和四十八年三月(1973)
大阪 難波 南街スカラ座

 

 パゾリーニの『デカメロン』は相当に話題になったようで、類似作がたくさん出た。私が観た『ブラック・デカメロン』はアフリカが舞台の黒人版だったが、原作はボッカチオではなく、アフリカの艶笑民話を集めたものらしい。主題歌が有名で、その後あちこちで耳にした。
 パゾリーニ自身もさっそく艶笑ものの第二弾を作っている。ジェフリー・チョーサー作の『カンタベリー物語』である。
 前作『デカメロン』で画家ジョットーに扮したパゾリーニ監督、今回は作者チョーサー役で出演もしている。
 常連のフランコ・チッティとニネット・ダボリはどちらにも出てくる。そして裸の女性がいっぱい出てくる。十代の私にとっては、それが一番うれしかった。
 この映画で特に印象的なのが地獄の場面。ある司祭が地獄に行く。そこには死後苦しめられている亡者たちが蠢いている。司祭はそこに聖職者がひとりもいないので、さすがに聖職者は地獄には堕ちないのだろうというと、悪魔たちがいっせいに排泄する。聖職者たちはその排泄物にまみれて悶えているのだった。なんとも壮絶な皮肉である。
 ヒース・レジャー主演の『ロック・ユー』は中世の騎士物語に現代のロックミュージックを被せたもので、従者の身分でありながら、馬上槍試合で勝ち抜く若者が主人公。その遍歴の旅の途中で主人公が出会う詩人がジェフリー・チョーサーポール・ベタニーが演じていた。

 

カンタベリー物語/I Racconti di Canterbury
1972 イタリア/公開1973
監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ
出演:ヒュー・グリフィス、ニネット・ダボリ、フランコ・チッティ、ジョゼフィン・チャップリン、ラウラ・ベッティ