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『映画に溺れて』第328回 男の出発(たびだち)

第328回 男の出発(たびだち)

昭和五十年七月(1975)
大阪 中之島 SABホール

 一九七〇年代の前半に観た忘れられない西部劇である。
 ゲイリー・グライムスふんする少年ベンは母ひとり子ひとり。男らしいカウボーイに憧れ、ひそかに金を貯めて銃を手に入れる。そこへカルペッパーを隊長とする一団が牛をテキサスからコロラドまで運ぶために通りかかる。ベンは家出して、キャラバンの料理人助手に雇われる。
 途中、牛泥棒と銃撃があり、殺されたカウボーイの代りに四人のならず者が補充される。見るからに凶悪そうなラス、粗暴なディキシー、陽気なミズーラ、そして無口なルーク。凶悪だが凄腕の四人、中でも無口なルークはベンを陰になり日向になり庇ってくれる頼もしい兄貴だ。
 ある牧場の近くを通りかかったとき、土地の悪徳大地主が一行の前に立ちふさがり、法外な要求をつきつけてくる。カルペッパーは、牛の通過を優先させるため、相手の要求をのみ大金を払うが、面白くないのが四人組。さらに、この大地主、一時間以内に立ち去らないと、残った牛は取り上げると宣言する。
 たまたまこの土地に野営していた新興宗教の集団がいて、大地主は彼らにもすぐに立ち去らないと皆殺しにすると通告する。ベンは信者たちを助けることを訴えるが、カルペッパーは無視して、大急ぎで牛の群れとともに去って行く。
 ベンと新興宗教の集団だけが残り、ここは約束の土地だから死んでも去らないという教祖。たったひとりで悪徳地主から彼らを守ろうと銃を手にするベン。そこへ血の気の多い四人組が駆け戻って来て、最後は大地主一味と銃撃戦。
 西部を舞台にした味わい深い少年の成長物語であり、ラストシーンが切ない。
 四人組のルーク・アスキュー、ボー・ホプキンス、ジェフリー・ルイス、ウェイン・サザーリン、隊長のビリー・グリーン・ブッシュ、他の西部劇などでもよく見かける味わい深い脇役たち。

男の出発/The Culpepper Cattle Co.
1972 アメリカ/公開1973
監督:ディック・リチャーズ
出演:ゲイリー・グライムス、ビリー・グリーン・ブッシュ、ルーク・アスキュー、ボー・ホプキンス、ジェフリー・ルイス、ウェイン・サザーリン、マット・クラーク