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『映画に溺れて』第330回 サーチャーズ2.0

第330回 サーチャーズ2.0

平成二十年十一月(2008)
新橋 TCC試写室

 ハリウッド映画はつまらないから観ない。という人がいる。派手なアクション、内容はスカスカ、似たようなアイディアの大味な作品ばかり。たしかにそういうのもあるが、だからといってハリウッド映画をまったく観ないなんて、もったいない気がする。
 では、インディーズ系のマイナー作品が面白いかというと、中にはあまりのひどさに途中で席を立ちたくなるようなのも、いっぱいある。もちろん、面白いものも。だから、ジャンルや製作費の額で映画を差別せず、まずは面白そうかどうかで判断を。
『サーチャーズ2.0』には驚いた。見るからに低予算。それを逆手に取って、無茶苦茶なアイディアだけで作られた奇妙な味わいがある。
 ふたりの初老の男が出会う。仕事にあぶれたその日暮らしのメルが一軒の家の前を通りかかると、中で懐かしい西部劇をTVで放送中。思わず、ずかずかと中に入って行く。TVを見ていたフレッドは突然の闖入者に驚くが、その昔、ふたりは同じ西部劇に子役として出演していたことがわかる。この唐突なご都合主義の設定でもう大笑い。
 メルが映画界をあきらめて日雇い労働者として日々を送っているのに対し、フレッドは今でも現役。B級映画に出演作がいくつかあるも、映画マニアの間でしか知られていない売れない俳優ではある。
 ふたりは映画の話で盛り上がり、子役時代の彼らを虐待した当時の脚本家がアリゾナでの上映会でトークショーを開くことを知り、復讐の旅に出る。
 メルは娘のデライラをだまして車を借り、結局三人でアリゾナまで。
 車中の会話というのが、ほとんど映画のことだけ。デライラはうんざりして耳をふさぐ。映画ファンが集まると、話題は好きな映画中心になるが、この初老のふたり、筋金入りの映画マニアなのだ。
 最後、老いた脚本家と再会を果たしたふたり、荒野で決闘することになる。その決闘というのが、映画のQ&A、つまりカルトクイズの対決。いやあ、楽しかった。

サーチャーズ2.0/Searchers 2.0
2007 アメリカ/公開2009
監督:アレックス・コックス
出演:デル・ザモラ、エド・バンシューロ、ジャクリン・ジャネット、サイ・リチャードスン