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『映画に溺れて』第364回 私のように美しい娘

第364回 私のように美しい娘

昭和五十年二月(1975)
大阪 梅田 北野シネマ

 

 学生時代、私のトリュフォー初体験がこれ。タイトルで内容が想像できない。中身もかなり変だったが、ベルナデット・ラフォン演じるあばずれの毒婦にぞくぞくした。
 最初、書店の場面、ある女性客が『女性と犯罪』という新刊を探している。店主に尋ねると、その本は予告が出たのに結局出版されていないとのこと。店主は首をかしげる。どうして出版されなかったのか。
 犯罪心理学者の若い教授スタニスラスが女性犯罪者の心理を研究し論文にまとめるため、刑務所を訪れる。そこで看守から紹介された女囚がカミーユ。彼女は害虫駆除業者を塔から突き落として殺害した罪で服役中だが、無罪を主張している。スタニスラスは論文の材料としてカミーユを取材することに。
 少女時代、彼女は父親を事故死させて感化院に入所。父親が屋根の修理をしているとき、わざと梯子を外して墜落させたらしいのだ。彼女は偶然の事故だったと殺意を否定し、自分の不幸な生い立ちを語る。
 カミーユに魅了されたスタニスラスは刑務所に通い、彼女から聞かされる波乱万丈の人生をテープに録音し記録する。
 感化院を脱走して農夫と結婚、酒場の歌手と不倫、夫が事故で入院中に悪徳弁護士と不倫、害虫駆除業者も誘惑して利用する。夫の母親の家のオーブンに仕掛けをし母親が死ねば遺産が入るように仕組む。
 これらの話を聞いて、スタニスラスはますます彼女のとりことなり、無実を証明するため、害虫駆除業者の死が自殺であることを骨折って証明する。
 晴れて出獄し、歌手としてデビューするカミーユ。彼女に誘われ、罠に落ちるスタニスラス。毒婦の魅力に翻弄される男たち。おしゃれな犯罪コメディである。
 カミーユ役のベルナデット・ラフォン、輝くように美しい。

 

私のように美しい娘/Une Belle Fille Comme Moi
1972 フランス/公開1974
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:ベルナデット・ラフォンアンドレ・デュソリエクロード・ブラッスール、シャルル・デネ、ギー・マルシャン