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『映画に溺れて』第390回 悪魔のはらわた

第390回 悪魔のはらわた

平成七年七月(1995)
六本木 俳優座劇場

 

 3Dの映画は昔からあった。私が子供の頃、片目が青、片目が赤のセルロイドの眼鏡で見た記憶がある。
 新宿高島屋のオープンに合わせてタイムズスクエア内に登場した東京アイマックスシアターは壁一面の巨大スクリーンで、偏光眼鏡による本格的な3D映画館だったが、一九九六年という時期、まだ3D作品は製作数が少なくて短編しか上映できず、結局は閉館となる。
 私が3D『悪魔のはらわた』を観たのはアイマックスができる前年の一九九五年、劇場は六本木の俳優座だった。一応は偏光眼鏡での鑑賞であったが、設備も不充分だったのか、二時間近くあの眼鏡をかけ続け、相当に目が疲れたことばかり記憶している。
 監修がアンディ・ウォーホル。古典的ホラーのフランケンシュタインを題材にして、近親相姦、ゲイ、死体愛好などインモラルな味付け。それが3Dというのだから、いかにもウォーホルらしい趣向である。
 生命創造に取り付かれ、女モンスターを完成させたフランケンシュタイン男爵は、次は男モンスターを創り、この理想のカップルを交配させることで、新人類を生み出そうと計画する。
 精力絶倫の農夫ニコラスを殺し、これを材料に男モンスターが完成かと思われたが、この農夫が人違いでゲイだったため、女モンスターに興味を示さない。
 男爵の実の姉であり妻でもある淫乱な男爵夫人はニコラスを召使いにして情事にふけるが、男モンスターにもちょっかいを出して、殺されてしまう。
 変態の助手は女モンスターの腹を引き裂き、怒り狂った男爵に殺される。このあたりが邦題になっているのだろう。悪魔のはらわた。
 最後は男爵がモンスターに槍で突き刺され、この槍がにゅうっと画面から飛び出すのだ。血みどろの立体効果で。
 男爵を演じたウド・キア、この翌年の『処女の生血』ではドラキュラ伯爵となる。

 

悪魔のはらわた/Flesh for Frankenstein
1973 イタリア・フランス/公開1974
監督:ポール・モリセイ
出演:ジョー・ダレッサンドロウド・キア、モニーク・ヴァン・ボーレン、アルノ・ジュエキング