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『映画に溺れて』第404回 ふるさとポルノ記 津軽シコシコ節

第404回 ふるさとポルノ記 津軽シコシコ節

昭和四十九年七月(1974)
大阪 梅田 日活関西支社試写室

 

 初めて映画会社の試写室で試写を観たのは、大阪の梅田にある日活関西支社だった。映画関係の仕事をしていたわけではない。当時、私はまだ大学一年で、「プレイガイドジャーナル」という関西中心の月刊情報誌を毎月購読していた。そのプレゼントコーナーに応募したら当選し、試写状が送られてきたのだ。
 作品は『ふるさとポルノ記 津軽シコシコ節』だった。当時の日活は石原裕次郎吉永小百合が主演する時代は終わっていて、ロマンポルノ路線の真っただ中である。私が日活ロマンポルノを観たのは、実はこれが初体験であった。
 タイトルは話題になった『津軽じょんがら節』をあざとく真似たものだが、私はこういう遊び心に昔から惹かれていた。
 舞台は東北の農村地帯、男たちが出稼ぎに行った後、寺の若い僧侶が修行から帰ってきて、これがいい男なので、村に残された女たちが騒ぐ。
 僧侶が想いを寄せているのが幼馴染の女教師で、鄙にも稀な清楚で知的な美女である。
 女教師も僧侶を憎からず思っているが、男は純情、女は気位が高くてロマンポルノなのになかなか結ばれない。そのうち、僧侶が偶然にも村の女たちといい仲になる。
 女教師に下心のある村の医者がそれを知って、僧侶の名前で偽の恋文を女教師に送り、夜中に雨戸をはずして忍び込む。僧侶だと思って迎え入れる女教師。若くて奥手の私には、なんとも刺激的な忘れられない場面である。
 女教師役の川村真樹は長身の美女で、元タカラジェンヌだったと後に知る。
 明るくおおらかなセックスコメディはこの少し前に公開されたパゾリーニの艶笑喜劇『デカメロン』や『カンタベリー物語』を思わせた。
 初めて観た日活ロマンポルノがとても気に入って、だが、日活の直営館にはなかなか行けず、何度かプレイガイドジャーナルの試写招待に応募したが当選せず、ようやく次に当たった映画がじめじめした陰惨な凌辱もので、がっかりした。それぞれ好みもあろうが、喜劇好きの私はポルノもやっぱりコメディ調が好きなのだ。

 

ふるさとポルノ記 津軽シコシコ節
1974
監督:白井伸明
出演:川村真樹、谷本一、前野霜一郎、島村謙次、高橋明、薊千露、吉野あい、南昌子