日本歴史時代作家協会 公式ブログ

歴史時代小説を書く作家、時代物イラストレーター、時代物記事を書くライター、研究者などが集う会です。Welcome to Japan Historical Writers' Association! Don't hesitate to contact us!

大河ドラマウォッチ「青天を衝け」 第13回 栄一、京の都へ

 栄一(吉沢亮)たちが企てていた、横浜焼き討ち計画は、長七郎(満島真之介)の必死の説得により、中止となりました。

 栄一と喜作(高良健吾)は、新たな攘夷の道を探るため、血洗島を後にしました。二人は、江戸で偶然会った平岡円四郎(堤真一)を頼って、江戸に行くつもりでした。

 江戸に来てみたところ、平岡円四郎は留守でした。徳川慶喜(草彅剛)の共で京に行ってしまっていたのでした。しかし円四郎は、栄一と喜作のことを、妻の、やすに話していたのです。やすは円四郎から書状を預かっていました。もし二人が来て、何か困っていたら、自分に会いに来いと。その書状は、二人が確かに円四郎の家臣であることを示すものでした。栄一はそれを受け取ろうとします。やすは念を押します。

「これを受け取るからには、あんたたち、きっちり、うちの人の家臣になるんだろうね。家臣になり、一橋に忠誠を尽くして働き、あんたたちの殿、うちの人を、ちゃーんと守ってくれるんだろうね」

 考え込む二人でしたが、栄一はあっさりと

「はい、忠誠を尽くします」

 と、いってしまうのです。

 栄一と喜作は、一橋家の家臣に見えるよう、侍の身なりを整えます。はしゃいで京に向かうのでした。

 京にやってきた二人はその華やかさに興奮します。そして浪人が新選組に追われている場面を目撃するのです。

 二人は夜の京を歩きながら話します。

「俺たちは攘夷の志士だい。徳川一門の一橋の威光にすがるなんて、あってはならるえことだ」

 と、喜作。栄一はいいます。

「いや、俺たちは一橋にすがったんじゃねえ。あの平岡様ってお方に、男と男の約束で、個々に助けてもらっただけだい。よし、きちんと礼をいって、それで終わりにすんだ」

 翌日、二人は慶喜の宿舎(若洲屋敷)を訪ねます。平岡はいないとのこと。出てきた者に、京に着いたとあいさつに来た、というと、そんなことなら伝えようといわれます。二人は建物を後にし、礼は尽くしたと確認しあうのでした。

 栄一と喜作は、揺れ動いている京の情勢を調べるため、攘夷の志士たちを訪ね歩くことにしました。当然話を聞くとなれば酒が入り、女が呼ばれます。栄一が市郎右衛門に渡された銭もすぐに少なくなっていったのでした。

 文久四年(1864)になっていました。まつりごとの中心は、江戸から京へと大きく変わっています。時の帝、公明天皇は、一橋慶喜松平春嶽(要潤)会津藩主、松平容保らを、朝議参与に任命し、参与会議を開かせました。その中心にいたのは、武力に勝る薩摩でした。慶喜松平春嶽と話します。

「まだ、薩摩を疑っておられるのですか」

 と、春嶽。慶喜はいいます。

「まつりごとは公儀(幕府)のもの。それをなぜ京で、まつりごとのごとき真似をするのかと」

「今の国難は、公儀の職務を越えております。今までの古臭い考えを捨て、まったく新しい世にせねば、まぬがれません」

 横から円四郎が口を出します。

「いや、しかし、天子様は今、公方様をことのほか、ご信頼のご様子」

「いや」春嶽はさえぎります。「公儀が公儀のみで国を守るのはもう無理だ。朝廷がこの先も、横浜の港を閉じよ、などと無理難題を押し付けるなら、徳川はもう、まつりごとの委任を返上したほうがよい」

 栄一と喜作は金がなくなるどころか、借金まみれになっていました。もっと安い宿に移ることにします。

「京に来て分かったのは、攘夷の連中は、幕府の不満をべらべらいってるだけで、ちっとも動かねえってことだ」

 二人は長七郎のことを思い出します。長七郎も京に出てくるようにとの文(ふみ)を出します。

 血洗島にいる長七郎は、文を受け取ると、喜び勇んで出発します。そして道中、長七郎は狐が嫁入りする幻影を見るのです。狐を斬ろうとした長七郎でしたが、実際には飛脚を斬っていました。

 京にいる栄一と喜作は、宿屋の窓から、怪しい人影を見ます。そして惇忠からの文を受け取るのです。文には長七郎が捕まったことが書いてありました。栄一たちが出した文も、お上の手に渡ってしまったのです。そこには横浜焼き討ちの件などを記していました。

「俺たちも確実に捕まる」

 と、慌てる二人。進退窮まったと嘆きます。そこに宿の者が、客が来たと知らせに来ます。逃げようと荷物を抱える二人。侍が部屋に入ってきます。その者は円四郎と共にいた、目つきの鋭い男でした。

「平岡様がお呼びだ」

 と、告げます。

 栄一と喜作は円四郎の前にいました。

「単刀直入に聞く」円四郎にいつもの気さくな様子は見られません。「江戸で何か企てたことはあるか。これまでに何か企てたことがあるなら、包まずに語れ」

「いえ、何も企ててはおりません」

 と、嘘をつく喜作。

「そうか、おぬしらのことについて、江戸のご公儀から、一橋に掛け合いが来た」円四郎は立ち上がります。「なんでも、おぬしら捕えるための取り締まりが、もう京まで追って来てるそうだ。ところが、おぬしらが京へ上るに際して、平岡の家来と名乗ったというので、一橋に掛け合ってきた。おぬしらには仕官を断られているゆえ、私も白々しく、ああ我が家来です、いつわりを答える訳にもいかねえ」円四郎はひれ伏す二人の回りを歩き回ります。「だからといってありのままに、平岡の家来ではございませぬと答えてしまえば、おぬしらがただちに捕縛されるのも、分かりきっている。で、返答に困っているという次第だ」

「まことにご迷惑をかけ、申し訳ございません」

 ひれ伏しながら栄一がいいます。平岡は打ち解けた様子になります。

「俺はな、いまさらおめえらに謝ってもらいてえわけでも、おべっかいわれてえわけでもねえんだ。おめえらとは知らぬ仲じゃねえ。おめえらの気質も多少は知ってる。悪く計ろうとは思っちゃいねえ。だから、包まずに話せ」

 二人は顔を上げます。喜作がいいます。

「実は、わたしくどもの仲間が、何かしらの罪を犯し、捕えられ、獄につながれたという文が届きました。その者に、我々からも文を出しておりました」

「内容は」

 と、問われ、栄一が話します。

「元来わたくしどもは、幕府はまつりごとをおこたっており、今のままじゃ日の本は成り立たねえ。一刻も早く、幕府を転覆せねばと悲憤慷慨(ひふんこうがい)しております。ですので、その持論を文に書き、そのままに送りました」

 あきれる円四郎。

「そんなこったろうと思ったてぜ」

 と、座り込みます。円四郎は二人に人殺しや盗みなどしていないだろうな、と、問いただします。

「ま、確かに、斬ってやりてえ、国を滅ぼす奸物を捨て置けねえとは考えましたが、あいにく、まだ手を下せる機会に恵まれておりません」

 と、話す栄一に、笑いも出ない円四郎。

「だったらそろそろ、腹を決めろい」円四郎は再び立ち上がります。「おめえらがたとえ、幕府を駄目だと思っていても、一橋が同じとは限らねえ。それによ、あの前途有為の君公に仕えるなら、草履取りをしたって、役に立つってもんだい」円四郎は二人の前にしゃがみます。「いたずらに幕府を倒すために命を投げ出したところで、それが本当に国のためになるのかどうか、おめえたちはまだ、そこんとこを分かっちゃいねえ。ま、俺はよ、まつりごとや、おのれの立場に関わりなく、おめえたちを気に入ってる。悪運が強えところも好きだ。そんだけ無鉄砲で、いつ死んでたっておかしかねえのに、こうして二人そろってもう一度顔を見せてくれた。どうだ、一橋の家来になれ」