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『映画に溺れて』第426回 白と黒

第426回 白と黒

平成十三年六月(2001)

京橋 フィルムセンター

 

 犯罪物、推理物の面白さは、最後に意外な犯人が用意されていて、あっと驚かされ大満足となるのだが、この映画は犯行の場面で始まる。

 弁護士会の会長夫人が浮気相手の若手弁護士、浜野に痴話喧嘩の果て、腰紐で首を締められる。いきなり犯人がわかってしまって、さて、どう展開するのか。

 お手伝いが戻ってくると、夫人が死んでいるので、警察に知らせる。夫の弁護士会会長は関西の会議で留守。浜野が夫人を訪ねていたことはお手伝いから知れているので、刑事はさっそく浜野を問い詰める。根っからの悪人でない浜野は刑事の前でしどろもどろ、そこへ突然、犯人が捕まったという知らせが入る。

 脇田という前科者が逮捕され、弁護士宅の宝石を所持しており、現場にも指紋が残されていることから、夫人殺しの犯人として起訴される。

 そこで登場するのが検事の落合。脇田は動かぬ証拠のある窃盗については認めたものの、夫人殺しについては白を切り続ける。強盗の前科があり、状況証拠から見ても犯人にまず間違いない。検事は粘り強く追い詰め、胸の病気で将来に絶望しているこの男、最後には根負けして、殺人も認めてしまう。

 いよいよ裁判となり、弁護を買って出たのが、驚いたことに被害者の夫の弁護士会会長。彼は死刑廃止論者で、自分の主義を通すためにもこの犯人を弁護するといい、その助手として浜野が選ばれる。

 容疑者が犯行を認めたので、浜野は動揺している。無実の人間が死刑になろうとしているのだ。良心の呵責に耐えらず、つい落合検事の前で不審な言動を洩らしてしまう。それに疑念を抱いた落合検事は……。

 橋本忍の見事な脚本に思わず唸った。ひょっとして『真実の行方』の原作者ウィリアム・ディールはこの日本映画を観ていたのだろうか。

 

白と黒 1963

監督:堀川弘通

出演:小林桂樹仲代達矢淡島千景乙羽信子大空真弓千田是也小沢栄太郎西村晃山茶花究三島雅夫、井川比佐志、東野英治郎、浜村純、永井智雄、菅井きん野村昭子