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『映画に溺れて』第449回 フリー・ガイ

第449回 フリー・ガイ

 

令和三年八月(2021)

立川 シネマシティ2

 

 フリーシティの銀行員ガイの一日は判で押したように規則正しい。朝、ベッドで目覚め、飼っている金魚に挨拶し、青いシャツに着替えて、出勤前にいつものコーヒーショップでいつものコーヒーを買う。同じ銀行の警備員バディと道々話しながら職場に入り、窓口業務に就くと、いつもながら銀行強盗に襲われ、床にうつぶせになり、顔を踏まれる。毎日が同じ繰り返しであるが、そのことに疑問を抱くことはない。

 実のところ、フリーシティは仮想現実の世界なのだ。プレイヤーがサングラスの犯罪者になってやりたい放題の悪事を楽しむコンピューターゲームであり、盗んだり暴力をふるったりすれば、それが得点として加算され、使用武器や戦闘能力が増大する。ガイはコンピューターでプログラムされた背景キャラクターに過ぎなかった。

 ゲーム「フリーシティ」は現実世界でミリーとキーズが共同開発した思考するAIが活用されている。ゲーム会社の社長アントワンはそれを認めず、ミリーはプレイヤーとして、ゲームの世界に入り込み、隠された盗作の証拠を探し求めている。

 ある日、フリーシティのガイはバディと道を歩きながら、路上で理想の女性を見つけ、規則正しい日常から逸脱して、あとを追ってしまう。モロトフガールと名乗るサングラスの女性こそ、ゲーム内に隠された謎を探すミリーのアバターだった。

 モロトフガールに恋したガイは彼女に協力するため、銀行業務はそっちのけで大奮闘。ゲーム上に新しく現れた青シャツのヒーロー、ガイの活躍で「フリーシティ」の人気が高まり、アントワンはこのプレイヤーを突き止めるよう社員に命じる。

 アントワンの下で雑用係に甘んじていたキーズは青シャツのヒーローがプレイヤーのアバターではなく、背景キャラクターが自ら思考し行動していることを知る。しかも恋まで。これこそ、自分とミリーが共同開発した考えるAIをアントワンが盗用した証拠だった。

 考えるAIは日進月歩で開発され、様々な分野で活用されている。いつかAIが人類と対立する時代がくれば、『ターミネーター』や『マトリックス』は現実になるだろう。

 

フリー・ガイ/Free Guy

2021 アメリカ/公開2021

監督:ショーン・レビ

出演:ライアン・レイノルズ、ジョディ・カマー、リル・レル・ハウリー、タイカ・ワイティティ、ジョー・キーリー、ウトカルシュ・アンブドゥカル