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『映画に溺れて』第457回 赤ちゃん教育

第457回 赤ちゃん教育

平成十二年一月(2000)
京橋 フィルムセンター大ホール

 

 ケーリー・グラントキャサリン・ヘプバーン、いずれもハリウッドの大スターであり、美男美女である。このふたりがドタバタ喜劇を演じるのだから面白い。
 若き古生物学者デヴィッド・ハクスリー教授は同僚アリスとの結婚式を翌日に控え、四年がかりで組み立てた恐竜標本を完成させるための最後の一片が届くのを待つばかりで、彼の研究所に百万ドルを寄付してくれる予定の貴婦人ランダム夫人の弁護士と接待ゴルフの最中である。
 そのゴルフ場で、デヴィッドのボールを間違って打ちながら、知らん顔でプレイを続ける若い女性。デヴィッドが抗議しても嘲笑うだけ。この金持ちの令嬢スーザンと出会ったために、彼の予定は次々と狂ってしまう。
 自動車を壊され、レストランでは弁護士に会えず、泥棒と間違えられたり、スーザンにあちこち連れまわされて悪夢の一日が過ぎる。
 翌朝、恐竜の骨が届き、ほっとしているとスーザンから電話で呼び出され、結婚式の当日だというのに、ベイビーという名の豹とともにコネチカットの別荘に連れて行かれ、次々にトラブルが続く。
 別荘の女主人であるスーザンの伯母が、研究所の出資者ランダム夫人であったり、大人しいペットのベイビーとは別にサーカスから逃げ出した狂暴な豹が庭に紛れ込んだり、ランダム夫人の飼い犬がデヴィッドの大切に持ち歩いていた恐竜の骨をくわえてどこかへ行ったり、間抜けな警察署長の誤解からみんなが留置場に入れられたり。こんなひどい目に遇いながらも、ふたりの間に恋が芽生えて、予想通りのラストシーンとなる。
 映画がサイレントからトーキーへと移り変わった時代に数多く作られたスクリューボールコメディの一本、一九七〇年代に『ラスト・ショー』のピーター・ボグダノビッチ監督がバーブラ・ストライサンドライアン・オニールで作った『おかしなおかしな大追跡』はこの『赤ちゃん教育』に想を得たものである。

赤ちゃん教育/Bringing Up Baby
1937 アメリカ/公開1938
監督:ハワード・ホークス
出演:キャサリン・ヘプバーンケーリー・グラント、バリー・フィッツジェラルド、フリッツ・フェルド、バージニア・ウォーカー