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『映画に溺れて』第319回 セッソマット

第319回 セッソマット

平成十八年七月(2006)
新橋 新橋文化

 

 以前、新橋文化の二本立てで観た一本がこれだったのだ。まったくなんの期待も予備知識もなかったので、驚いた。一九七三年の作品で、ジャンカルロ・ジャンニーニラウラ・アントネッリが主演、九つの短編を集めたセックスコメディのオムニバスである。そして、九編ともにジャンニーニとアントネッリが主演する。ジャンニーニは三十前後、アントネッリは二十代後半の頃である。
 ジャンニーニは金持ち、貧乏人、インテリ、田舎者、変人、若者、初老、様々な役を演じ分ける。相当の芸達者なのだ。
 アントネッリは昔、『青い体験』で軽薄少年を誘惑するメイドの役でぞくぞくするほどの性的魅力を発散させていたが、今回もまったくフェロモン全開である。
「寝起きの悪い金持ちの夫人と使用人」
「小屋に住む貧乏人の子沢山夫婦」
「美人の妻に見向きもしない老女好きの変態男」
「乗り物でしか欲情しない新婚夫婦」
「町で拾った娼婦に別れた妻の恰好をさせる初老のしょぼくれ男」
精子提供者と修道女」
「殺された夫の仇を打つためマフィアのボスをセックスで衰弱死させる未亡人」
「田舎出の青年と男娼」
「実業家夫妻に招待され夫人に誘惑されるビジネスマン」
 どれもこれも味の濃い凝った逸品ぞろいである。長らく公開されなかったこの映画に出会えたことは僥倖であった。今はなき二本立て新橋文化に感謝する次第。

 

セッソマット/Sessomatto
1973 イタリア/公開2005
監督:ディーノ・リージ
出演:ラウラ・アントネッリジャンカルロ・ジャンニーニ、アルベルト・リオネロ、デュリオ・デル・プレト