日本歴史時代作家協会 公式ブログ

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2021-01-01から1年間の記事一覧

書評『北斗の邦へ翔べ』

書名『北斗の邦へ翔べ』 著者 谷津矢車出版社 角川春樹事務所発行日 2021年11月18日定価 ¥1700円E 北斗の邦へ翔べ 作者:谷津 矢車 角川春樹事務所 Amazon 「勝ち目はないだろう戦(いくさ)」(福沢諭吉「痩せ我慢の説」)戊辰戦争に参戦した榎本…

『映画に溺れて』第468回 ダークナイト

第468回 ダークナイト 平成二十年八月(2008)新宿 新宿ピカデリー 私の好きなバットマン俳優はティム・バートン監督の二作に出たマイケル・キートンである。バートンのグロテスクともいえるユーモア感覚に、とても善人には見えない面構えのキートンがぴ…

大河ドラマウォッチ「青天を衝け」 最終回 青春は続く

大正八年(1919)。ドイツの降伏で、第一次世界大戦が終結。日本は、戦後処理のために開かれたパリ講和会議で、人種差別の撤廃を欧米各国に求める一方、中国の山東半島におけるドイツの権益を要求。日本に対する、各国の警戒が強まり、中国や朝鮮半島では、反…

『映画に溺れて』第467回 シザーハンズ

第467回 シザーハンズ 平成二年十二月(1991)池袋 文芸坐 アメリカの郊外にある新興住宅地、カラフルな家々がまるでモデルハウスのように建ち並んでいる。そのすぐそばにそびえる小高い丘。丘の上の屋敷に住む発明家が人造人間を創造する。これはティム…

大河ドラマウォッチ「青天を衝け」 第40回 栄一、海を越えて

栄一(吉沢亮)は皆の前で宣言します。 「私は、このたび、第一線を退くこととしました。第一銀行と銀行集会所以外の役員、すべて辞任し、実業界を引退したいと思う」皆は騒然となります。「惜しんでくれてありがたい。しかし今は、時代は変り、人材もそろった…

『映画に溺れて』第466回 マルコヴィッチの穴

第466回 マルコヴィッチの穴 平成十二年十月(2000)伊勢佐木町 横浜オスカー これぞ奇想天外という言葉がぴったりと当てはまる作品である。 なにしろ、実在のスター俳優、ジョン・マルコヴィッチの頭の中に入るトンネルが偶然に見つかり、マルコヴィッ…

大河ドラマウォッチ「青天を衝け」 第39回 栄一と戦争

日清戦争に勝利し、一等国への階段を駆け上ろうとしていた日本。 栄一(吉沢亮)は、喜作(高良健吾)と、血洗島に戻っていました。平九郎の位牌に手を合わせます。惇忠(田辺誠一)がいいます。 「悲憤慷慨(ひふんこうがい)していた頃の俺たちの夢が、よ…

『映画に溺れて』第465回 時計じかけのオレンジ

第465回 時計じかけのオレンジ 昭和四十七年九月(1972)大阪 難波 なんばロキシー 私のキューブリック初体験は『時計じかけのオレンジ』で、十八歳だった。主人公のアレックスは高校生の設定だからほぼ同世代である。 一九六〇年代末から七〇年代初めに…

2021年新刊書評年末号

2021年新刊書評年末号 風呼ぶ狐 西南戦争の潜入警察官 (文藝春秋企画出版) 作者:天堂 晋助 文藝春秋企画出版部 Amazon 天堂晋助『風呼ぶ狐 西南戦争の潜入警察官』が抜群の面白さである。 作者にとっては久しぶりの長編小説の刊行である。そう言えば作者とは…

大河ドラマウォッチ「青天を衝け」 第38回 栄一の嫡男

明治二十二年(1889)、夏。上野で徳川家康が江戸城に入って三百年の節目を祝う「東京開始三百年祭」が開かれました。この祭りを企画したのは、旧幕臣たちでした。 慶喜(草彅剛)の側に仕えていた猪狩勝三郎(遠山俊也)が、水戸烈公(竹中直人)の口癖であ…

『映画に溺れて』第464回 アンテベラム

第464回 アンテベラム 令和三年十一月(2021)日比谷 TOHOシネマズシャンテ 黒人女性を主人公としたふたつの世界の物語が描かれる。 アメリカ南部の農園で酷使される女奴隷のエデン。南部連合の旗が翻り、農場を支配するのは南軍の将軍とその配下の…

大河ドラマウォッチ「青天を衝け」 第37回 栄一、あがく

千代の死から、三ヶ月がたちました。栄一(吉沢亮)は「顔色が悪い」と喜作(高良健吾)にいわれる始末です。 「渋沢には、早う次の妻を探さにゃならんな」と、立ち上がったのは井上馨(福士誠治)です。「でなけんにゃ、日本経済そのものにも大いに差し障り…

『映画に溺れて』第463回 騙し絵の牙

第463回 騙し絵の牙 令和三年三月(2021)新宿 新宿ピカデリー 出版不況と言われて久しい。本が売れて出版社も作家も町の書店も潤った時代は遠い昔のことだ。本が売れなくても雑誌が売れていればなんとかなっていたが、今はもう雑誌も売れない。この先、…

書評『尼将軍』

書 名 『尼将軍』 著 者 三田誠広発 売 作品社発行年月日 2021年9月25日 尼将軍 作者:三田誠広 作品社 Amazon 頼朝の流人生活を伝える歴史史料はきわめて乏しく、頼朝と政子の運命的な結びつきについては「はっきりしたことはわからない」(奥富敬之『…

大河ドラマウォッチ「青天を衝け」 第36回 栄一と千代

栄一(吉沢亮)たちは、三菱に対抗すべく、海運業者の合本(がっぽん)組織「東京風帆船(ふうはんせん)会社」を設立しました。 「合本で、三菱の一人勝ちを打ち破ろう」 と、栄一は皆に宣言します。 岩崎弥太郎(中村芝翫)は大隈重信(大倉孝二)と話して…

『映画に溺れて』第462回 最後の決闘裁判

第462回 最後の決闘裁判 令和三年十月(2021)立川 TOHOシネマズ立川立飛 ミステリアスな実録中世騎士物語である。 十四世紀末のフランス、ノルマンディーの騎士ジャン・ド・カルージュは留守中、屋敷で妻のマルグリットをかつての友ジャック・ル・…

天堂晋助さん新刊

「大河ドラマウォッチ」でおなじみ・天堂晋助さんの新刊予約が始まりました! 風呼ぶ狐 西南戦争の潜入警察官 (文藝春秋企画出版) 作者:天堂 晋助 文藝春秋 Amazon

大河ドラマウォッチ「青天を衝け」 第35回 栄一、もてなす

アメリカの元大統領、グラント将軍を、国を挙げて、もてなすことになりました。民(みん)の力を見せつけてやると、栄一(吉沢亮)たちは大はりきりです。 築地の大隈邸に、栄一の妻の千代(橋本愛)と、喜作(高良健吾)の妻の、よし、がやって来ます。待っていたの…

『映画に溺れて』第461回 クーリエ 最高機密の運び屋

第461回 クーリエ 最高機密の運び屋 令和三年十月(2021)日比谷 TOHOシネマズ日比谷 イアン・フレミング原作の007シリーズがショーン・コネリー主演で映画化されたのが一九六二年、日本公開時のタイトルが『007は殺しの番号』だった。 米ソが…

『映画に溺れて』第460回 空白

第460回 空白 令和三年九月(2021)飯田橋 角川試写室 個性派の脇役として活躍する古田新太の主演作。劇映画なのに、最初の船で漁をするシーンから、まるでドキュメンタリーフィルムを観るようなリアルさ。 海に近い地方の町で漁師を営む添田は気が荒く…

『映画に溺れて』第459回 恋愛適齢期

第459回 恋愛適齢期 平成十六年四月(2004)銀座 丸の内東映 ジャック・ニコルソンとダイアン・キートンが共演、年配男女のラブコメディである。 ハリーは六十三歳のプレイボーイ。レコード会社を所有し悠々自適、結婚経験はなく、恋の相手は次々と変わ…

大河ドラマウォッチ「青天を衝け」 第34回 栄一と伝説の商人

明治十年(1877年)。鹿児島の西郷軍と、明治政府との戦争が勃発。西南戦争です。政府の税収の九割近くが、戦費に費やされました。 西郷、大久保なき後、日本の財政を動かしていたのは、大隈重信(大倉孝二)でした。渋沢栄一(吉沢亮)は大隈を待ち構え、いいま…

『映画に溺れて』第458回 ニノチカ

第458回 ニノチカ 平成八年十月(1996)銀座 銀座文化 グレタ・ガルボ。一九〇五年にスウェーデンで生まれ、二十歳でハリウッドに移り、サイレント全盛時代からトーキー初期に活躍し、三十五歳で引退、一九九〇年に八十四歳で亡くなった。私が映画館で観…

『映画に溺れて』第457回 赤ちゃん教育

第457回 赤ちゃん教育 平成十二年一月(2000)京橋 フィルムセンター大ホール ケーリー・グラント、キャサリン・ヘプバーン、いずれもハリウッドの大スターであり、美男美女である。このふたりがドタバタ喜劇を演じるのだから面白い。 若き古生物学者デ…

『映画に溺れて』第456回 愛しのローズマリー

第456回 愛しのローズマリー 平成十四年六月(2002)日比谷 日比谷映画 ともかく、美女が次々とたくさん出てくる映画である。 外見の美しい女性と心の美しい女性と、どちらがいいだろう。ジャック・ブラックふんするハル・ラーソンは女性の外見にしか興…

大河ドラマウォッチ「青天を衝け」 第33回 論語と算盤(そろばん)

渋沢栄一(吉沢亮)は、大隈重信(大倉孝二)の邸宅を訪ねていました。大隈が部屋に入ってくると、栄一は立ち上がります。 「大隈さん、あんまりではありませんか」 「なんじゃい。いきなり」 大隈はすでにけんか腰です。 「小野組や三井組にいきなり、政府…

『映画に溺れて』第455回 2番めのキス

第455回 2番めのキス 平成十八年十月(2006)飯田橋 ギンレイホール ファレリー兄弟のラブコメディ『2番目のキス』に描かれたレッドソックスのファンというのは、日本でいえば、さしずめ大阪の阪神タイガースファンなのだと思う。 ベンは三十過ぎで独…

大河ドラマウォッチ「青天を衝け」 第32回 栄一、銀行を作る

渋沢栄一(吉沢亮)は、銀行という仕組みを民間に根付かせるため、三年半勤めた政府を、辞める決意を固めました。 同時期に井上馨も政府を辞職します。 政府を去ろうとする栄一を引き止めようと、三条実実(金井勇太)らはいいます。 「おぬしは、おぬしのそ…

『映画に溺れて』第454回 エバー・アフター

第454回 エバー・アフター 平成十一年七月(1999)飯田橋 ギンレイホール 十九世紀、グリム兄弟が貴婦人の元へ呼ばれると、彼女はガラスの靴を見せ、例の「灰かぶり」の物語は本当にあった話だと語る。 十六世紀前半のフランス。実際にはヴァロア朝だが…

会員・亀和夫さんからの連絡です。メール内容は多少編集して掲載しております。 また、添付pdfはブログ内に張り付けられませんでした。そのかわりにリンク先をご覧ください。 ------- 添付のチラシの舞台をします。ご案内が遅くなり、すいません。「マリアの…