日本歴史時代作家協会 公式ブログ

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2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

書評『桔梗の旗 明智光秀と光慶』

書名『桔梗の旗 明智光秀と光慶』著者 谷津矢車発売 潮出版社発行年月日 2019年12月5日定価 ¥1500E 桔梗の旗 明智光秀と光慶 作者:谷津 矢車 出版社/メーカー: 潮出版社 発売日: 2019/12/05 メディア: 単行本(ソフトカバー) 明智光秀には細川…

『映画に溺れて』第271回 博士の異常な愛情

第271回 博士の異常な愛情 昭和五十年八月(1975)大阪 中之島 SABホール 最初に観たキューブリックの映画は『時計仕掛けのオレンジ』で、まだ私が十代のころだ。そのとき、この映画『博士の異常な愛情』を知り、変なタイトルだな、と思った。マッド…

『映画に溺れて』第270回 チャンス

第270回 チャンス 令和元年五月(2019)池袋 新文芸坐 子供の頃からお屋敷に住み込みで仕えている中年の庭師チャンス。屋敷から一歩も出たことがなく、正規の教育も受けていないので読み書きができず、庭の手入をする以外は、ただ一日中TVを見て過ごし…

『映画に溺れて』第269回 くちづけはタンゴの後で

第269回 くちづけはタンゴの後で 平成八年十一月(1996)有楽町 スバル座 コーネル・ウールリッチがウィリアム・アイリッシュ名で発表した『死者との結婚』は読む者の不安をかきたてる。貧しい妊婦がやくざな男に捨てられ、たまたま乗った列車で親切な新…

頼迅庵の新書・専門書レビュー『危険な「美学」』

『危険な「美学」』 危険な「美学」 (インターナショナル新書) 作者:津上 英輔 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル 発売日: 2019/10/07 メディア: 新書 1.歴史時代小説の時代区分について 歴史時代小説の対象となる時代はいつからでしょうか? 私…

『映画に溺れて』第268回 不機嫌な赤いバラ

第268回 不機嫌な赤いバラ 平成七年四月(1995)池袋 文芸坐 シャーリー・マクレーン出演の映画はたくさんあるが、私の好みはほとんどがコメディなのだ。『愛と追憶の日々』などシリアスな作品にはさほど興味がないし、真面目に神秘体験や輪廻転生を主張…

『映画に溺れて』第267回 あなただけ今晩は

第267回 あなただけ今晩は 昭和五十三年十月(1978)渋谷 東急名画座 ジャック・レモンとシャーリー・マクレーンが共演、監督がビリー・ワイルダーとくれば、もう一本が『あなただけ今晩は』である。 シャーリー・マクレーンふんするイルマ・ラ・ドゥー…

『映画に溺れて』第266回 アパートの鍵貸します

第266回 アパートの鍵貸します 昭和六十二年十二月(1987)新宿 新宿ロマン 名匠ビリー・ワイルダー監督には好きな映画がいっぱいだが、『アパートの鍵貸します』は伏線を張りめぐらせた、これぞコメディの教科書のような作品である。 ジャック・レモン…

『映画に溺れて』第265回 天使のくれた時間

第265回 天使のくれた時間 平成十三年五月(2001)渋谷 渋東シネタワー3 アクション映画の主演が目立つニコラス・ケイジ、心温まるクリスマスストーリーにも出ている。 ニューヨークに住む金融業界の大物成功者ジャック。高級ペントハウスの最上階から…

『映画に溺れて』第264回 デンジャラス・ビューティ

第264回 デンジャラス・ビューティ 平成十三年十一月(2001)新橋 新橋文化 サンドラ・ブロックの映画はシリアスよりもコメディが私は好きだ。中でも美人コンテストを扱った『デンジャラス・ビューティ』が楽しい。 FBI捜査官のグレイシーは男まさり…

『映画に溺れて』第263回 あなたが寝てる間に

第263回 あなたが寝てる間に 平成八年四月(1996)池袋 文芸坐 クリスマスには奇跡が起こり、みんなが優しい気持ちになって、しあわせが訪れる。そんなクリスマスストーリーがたくさん作られているが、サンドラ・ブロック主演のラブコメディ『あなたが寝…

『映画に溺れて』第262回 ギャラクシー・クエスト

第262回 ギャラクシー・クエスト 平成十二年十月(2000)九段下 九段会館 ティム・アレン主演作はそんなに観ていないのだが、一番好きなのがやはり『ギャラクシー・クエスト』だ。 かつて『ギャラクシー・クエスト』というTVの人気宇宙活劇のシリーズ…

『映画に溺れて』第261回 サンタクローズ

第261回 サンタクローズ 平成七年十二月(1995)日比谷 シャンテシネ3 サンタさんは本当にいるのか。宇宙人や幽霊の実在を口を酸っぱくして語る大人はいても、サンタクロースの存在を証明するために熱くなる大人はあまりいない。宇宙人や幽霊よりも、サ…

『映画に溺れて』第260回 戦場のアリア

第260回 戦場のアリア 平成十八年十月(2006)飯田橋 ギンレイホール 日本で初めてクリスマスが祝われたのは宣教師ザビエルが布教を許可された翌年、天文十六年のこと。切支丹大名の間で、合戦が一時クリスマス休戦されたとか。 第一次世界大戦のクリス…

『映画に溺れて』第259回 素晴らしき哉、人生

第259回 素晴らしき哉、人生 平成二十四年一月(2012)府中 TOHOシネマズ府中 クリスマス映画はたくさんあるが、私はこれが一番。 ジェームズ・スチュアート演じる主人公ジョージ・ベイリー。夢は金持ちになって世界一周すること。子供の頃、川で溺…

『映画に溺れて』第258回 クリスマス・キャロル

第258回 クリスマス・キャロル 平成十四年十二月(2002)西東京 谷戸公民館 年末になると上映されるのがクリスマスストーリー。チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』を文庫で読んだのは、高校生のときだった。 血も涙もない金の亡者、因業…

『映画に溺れて』第257回 携帯忠臣蔵/世にも奇妙な物語 映画の特別編

第257回 携帯忠臣蔵/世にも奇妙な物語 映画の特別編 平成十三年一月(2001)新宿 新宿文化シネマ3 一九八〇年代の終わり頃、深夜TVで『奇妙な出来事』という番組があった。『トワイライトゾーン』を思わせる怪奇、SF、ミステリ、ファンタジーなど…

『映画に溺れて』第256回 なにわ忠臣蔵

第256回 なにわ忠臣蔵 平成九年十一月(1997)築地 松竹セントラル3 私は忠臣蔵はある種やくざ映画に近いと思っていた。かっとなって見境なく暴力を振るう浅野内匠頭。徒党を組んで殴り込み、仕返しする大石内蔵助以下赤穂浪士。討ち入りの出入りはまる…

大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 最終回 時間よ止まれ

1964年10月10日。田畑政治(阿部サダヲ)は一人、国立競技場にいました。昨夜の大雨が嘘のように晴れ渡っています。そこへ金栗四三(中村勘九郎)がやって来るのです。二人とも眠れなかったのでした。田畑はいいます。「一番面白いことをやるんだ。今日から…

『映画に溺れて』第255回 悪党

第255回 悪党 平成二十二年五月(2010)阿佐ヶ谷 ラピュタ阿佐ヶ谷 歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』では、元禄の赤穂事件を南北朝の世界に置き換えているので、足利尊氏の執事である高師直が、出雲の武将塩冶判官高貞の妻顔世御前に懸想して袖にされ、腹いせ…

書評『十三の海鳴り』

書名『十三の海鳴り』著者 安部龍太郎発売 集英社 発行年月日 2019年10月30日定価 ¥2000E 蝦夷太平記 十三の海鳴り 作者:安部 龍太郎 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2019/10/25 メディア: 単行本 作家安部龍太郎が生まれ育った福岡県八女郡の山…

『映画に溺れて』第254回 忠臣蔵外伝 四谷怪談

第254回 忠臣蔵外伝 四谷怪談 平成六年十二月(1994)新宿 新宿松竹 歌舞伎通の人なら承知だろうが、四世鶴屋南北の『東海道四谷怪談』は『仮名手本忠臣蔵』の裏の世界を描いたパロディになっている。 江戸時代は芝居で史実を実名のまま描くことは憚られ…

『映画に溺れて』第253回 サラリーマン忠臣蔵

第253回 サラリーマン忠臣蔵 平成十三年六月(2001)京橋 フィルムセンター 東宝の社長シリーズに代表されるサラリーマン喜劇に忠臣蔵の筋書きをそのまま当てはめたコメディが『サラリーマン忠臣蔵』である。 時は現代。丸の内の朝の出勤風景は社長シリ…

『映画に溺れて』第252回 わんわん忠臣蔵

第252回 わんわん忠臣蔵 昭和三十八年十二月(1963)大阪 八尾 八尾東映 私が最初に映画館で観た忠臣蔵がなんであったか、それはわからない。学齢に達する幼児の頃から、祖母に連れられてしょっちゅう映画館に通っていたのは憶えている。たいていは時代…

書評『忠臣蔵の姫 阿久利』

書名『忠臣蔵の姫 阿久利』著者 佐々木裕一発売 小学館発行年月日 2019年12月14日定価 ¥1500E 忠臣蔵の姫 阿久利 作者:佐々木 裕一 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2019/12/09 メディア: 単行本 大石内蔵助良雄(おおいしくらのすけよしお)ら赤穂浪士四十…

『映画に溺れて』第251回 決算!忠臣蔵

第251回 決算!忠臣蔵 令和元年十月(2019)築地 松竹試写室 忠臣蔵はおそらくわが国ではもっとも有名な物語のひとつだろう。 元禄十四年、江戸城内で赤穂藩主浅野内匠頭が高家筆頭吉良上野介に斬りかかった傷害事件。内匠頭は即日切腹、赤穂浅野家は取…

『映画に溺れて』第250回 探偵/スルース

第250回 探偵/スルース 昭和四十八年十月(1973)大阪 梅田 北野シネマ 劇作家ピーター・シェーファーは実は双子で、しかも驚いたことに、双子のもうひとりアンソニー・シェーファーもまた劇作家なのだ。アガサ・クリスティ風の推理劇を書いていて、名匠…

『映画に溺れて』第249回 フォロー・ミー

第249回 フォロー・ミー 昭和四十九年四月(1974)大阪 中之島 SABホール 周防正行監督『Shall We ダンス』で、柄本明ふんする探偵の事務所に『フォロー・ミー』のポスターがさりげなく貼られていた。 ピーター・シェーファーの戯曲『他人の目…

大河ドラマウォッチ「いだてん 東京オリムピック噺」 第46回 炎のランナー

昭和39年(1964)。オリンピック開催の年です。東京は上を下への大騒ぎ。なにしろ新幹線も首都高も完成していません。 田畑政治(阿部サダヲ)が組織委員会を去って、一年半が経ちました。近頃は田畑の家に、東京オリンピック組織委員会の面々が訪れなくなっ…

『映画に溺れて』第248回 ソルジャーボーイ

第248回 ソルジャーボーイ 昭和四十七年十月(1972)大阪 難波 南街シネマ 私が高校生の時に観た『ソルジャーブルー』は騎兵隊によるインディアンの大虐殺を描いて、当時泥沼化していたベトナム戦争を批判しているが、後味は悪かった。 その翌年に公開さ…