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『映画に溺れて』第253回 サラリーマン忠臣蔵

第253回 サラリーマン忠臣蔵

平成十三年六月(2001)
京橋 フィルムセンター

 東宝の社長シリーズに代表されるサラリーマン喜劇に忠臣蔵の筋書きをそのまま当てはめたコメディが『サラリーマン忠臣蔵』である。
 時は現代。丸の内の朝の出勤風景は社長シリーズに同じ。社長室の先代社長の肖像写真も同じだが、ただし、今回の社長は池部良で、森繁久弥は重役なのだ。
 企業共同体の足利グループ傘下にある浅野商事で社長は浅野、重役が森繁の大石専務と有島一郎の大野常務。
 アメリカの企業との業務提携のため、向こうの幹部を東京に招いて接待することになり、その責任者が足利銀行の吉良頭取。ふんするは東野英治郎
 傘下グループの会議の席で、接待役のひとり桃井産業社長の桃井が吉良と喧嘩になるところ、後日、桃井の部下が吉良に高価な贈り物をして難を逃れ、その切っ先がたまたま吉良の贔屓の芸者と恋仲の浅野に向いて、浅野は満座で侮辱されて、失意のうちに事故死する。
 パリに商談に行って留守だった大石専務が、新社長として乗り込んで来た吉良に復讐するというストーリー。
 忠臣蔵をサラリーマン喜劇に移すにはちょっと無理もあるが、この映画が作られた当時にはだれもが忠臣蔵のストーリーや登場人物をよく知っていたので、パロディとして喜ばれたと思う。
 社長の息子が新入社員の大石力、専務の運転手が寺岡、その妹の専務秘書が軽子、軽子の恋人で社長秘書が早野、専務派の部長が小野寺、社員が赤垣、磯貝、岡野など、大野の息子で遊び人のブローカーが定九郎、吉良頭取の秘書が伴内と、『仮名手本忠臣蔵』や実際の赤穂事件の人物名を当てはめていて、忠臣蔵が常識だった当時の観客はにやりとしたのだろう。今はもうこんな趣向は難しいかもしれない。


サラリーマン忠臣蔵
1960
監督:杉江敏男
出演:森繁久彌久慈あさみ夏木陽介池部良新珠三千代東野英治郎加東大介有島一郎三橋達也、団令子、小林桂樹司葉子宝田明山茶花究三船敏郎志村喬柳永二郎児玉清江原達怡藤木悠八波むと志、沢村いき雄、草笛光子