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『映画に溺れて』第248回 ソルジャーボーイ

第248回 ソルジャーボーイ

昭和四十七年十月(1972)
大阪 難波 南街シネマ

 

 私が高校生の時に観た『ソルジャーブルー』は騎兵隊によるインディアンの大虐殺を描いて、当時泥沼化していたベトナム戦争を批判しているが、後味は悪かった。
 その翌年に公開されたのが『ソルジャーボーイ』で、題名が『ソルジャーブルー』に似ており、やはりベトナム反戦がテーマである。『ソルジャーブルー』ほど話題にもならず、あまりヒットしなかった。四人の青年の膝に全裸の女性が笑って寝そべっているポスターに惹かれて、私は封切り時に観ている。
 ジョー・ドン・ベイカー以下四人のベトナム帰りの若者が、故郷に帰ってもだれも温かく迎えてくれない。中年男たちは「俺たちは朝鮮から簡単に引き下がらなかったぞ」などと言って、若者を馬鹿にする。
 彼らは四人で力を合わせて牧場を開こうと、中古車に荷物を積み込んで西を目指す。このトランクの中の荷物が問題なのだが。
 軽い青春ロードムービーのように物語は進行して、ある町に若者たちは到着する。
 閉鎖的な町で、よそものを受け入れず、四人はいやがらせをされる。『イージーライダー』のヒッピーは田舎の親父にあっけなく撃ち殺されておしまいだったが、この四人はそうはならない。彼らは訓練された優秀な兵士だった。
 四人は町の連中の仕打ちにとうとう逆上する。いきなり車のトランクから荷物、ベトナムから持ち帰った武器を取り出し、号令を掛け合いながら、この無礼で排他的な町を徹底攻撃するのだ。ベトナムでやっていたように。四人にとって、このアメリカの田舎町はベトコンの村と区別がつかなくなっていた。
 ただの青春映画かと思っていたので、このラストには震え上がった。
 ジョー・ドン・ベイカーは、その後、007シリーズの悪役などやっていた。

 

ソルジャーボーイ/Welcome Home, Soldier Boys
1972 アメリカ/公開1972
監督:リチャード・コンプトン
出演:ジョー・ドン・ベイカー、ポール・コスロ、アラン・ビント、エリオット・ストリート、ビリー・グリーン・ブッシュ、ジェフリー・ルイス