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『映画に溺れて』第322回 大いなる西部

平成二十五年五月(2013)
池袋 新文芸坐

 

 池袋新文芸坐でのクラシック特集で鑑賞。
 西部劇の古典の一本ではあるが、早撃ちガンマンの決闘などはなく、人間ドラマになっている。最初の荒くれ男たちの馬の曲乗り、いきなり目を瞠った。
 西部の町に駅馬車から降り立ったのは、荒野には似つかわしくない洒落た身なりの都会人ジム。これがグレゴリー・ペック
 東部に旅行中のパトリシアと婚約し、彼女の実家のあるテキサスへやってきたのだ。彼女の父親テリル少佐は地域の大地主で、勢力を二分する丘の牧場主ヘネシー一家といがみあい、互いの使用人であるカウボーイたちも争いが絶えない。
 丘の連中にけんかを売られて無抵抗のジムにパトリシアは怒り、少佐は仕返しに配下のカウボーイを引き連れて丘を荒らす。
 警察もなく、保安官もいない地域では、有力者が銃でものごとを解決する。
 血の気の多い荒くれ男たちの中に突如として入ってきた都会人ジム。が、実は臆病者ではなく、彼に敵意を見せる牧童頭と殴りあったら、五分五分の腕力の持ち主。パトリシアに気のある牧童頭を演じるはチャールトン・ヘストン
 二大勢力の中間にある中立地帯に水源があり、ここを守っているのが女教師ジュリー。この土地を奪おうと、ヘネシーと少佐はさらに対立を深める。無抵抗主義のジムはジュリーに共感するが……。
 この映画が作られたのは冷戦時代。テリル少佐とヘネシー一家はアメリカとソ連ではないかと、深読みしてしまった。好戦的な指導者が上にいると、国民は簡単に戦争に巻き込まれてしまうよ、と言ってるような気がする。

 

大いなる西部/The Big Country
1958 アメリカ/公開1958
監督:ウィリアム・ワイラー
出演:グレゴリー・ペックジーン・シモンズ、キャロル・ベイカー、チャールトン・ヘストン、バール・アイヴス、チャールス・ビックフォード、アルフォンソ・ベドーヤ、チャック・コナーズ