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『映画に溺れて』第539回 怪物團 フリークス

第539回 怪物團 フリークス

昭和五十五年九月(1980)
大阪 靭公園 科学技術センターホール

 

『ナイトメア・アリー』を観ていて、真っ先に連想したのがカーニバルの見世物を題材にしたトッド・ブラウニングの異色ホラー映画『フリークス』である。
 作られたのはアメリカの大恐慌禁酒法時代が重なる一九三二年、日本ではその昭和七年十一月に『怪物團』のタイトルで公開されている。
 見世物の口上役が因果物の説明をしており、囲いの中には何か不気味なモノがいるらしい。口上役は言う。これは最初からこうではなかった。かつては王侯さえ恋した美女だったのだと。
 サーカス小屋で小人のハンスに大金が入ることを察知した軽業の美女クレオパトラはハンスを誘惑する。ふたりの婚約祝いにハンスの仲間の奇形たちが集合する。小人たち。上半身だけの男。手足のない芋虫男。両性具有。三角頭。シャム双生児
 クレオパトラは酔って、奇形たちの悪口を言う。実際には『道』のアンソニー・クインを思わせる下劣で卑しい力持ちのヘラクレスの情婦であり、ハンスを騙して結婚に持ち込み、ヘラクレスと共謀してハンスを殺害して遺産を横取りしようと企む。
 彼らの悪巧みを知った道化師がヘラクレスを訴えようとして首をしめられ、大雨の中、奇形たちはヘラクレスクレオパトラを追い詰める。
 そして、最初の見世物の場面、重症の後、不具の鵞鳥女となったクレオパトラが囲いの中で、ガーガーと泣いている。一応勧善懲悪風には作ってあるが、ストーリーはつけたしで、ここに登場する奇形の芸人、見世物たちは映画のために世界中から集められた本物のフリークスなのだ。だから、この映画そのものが相当に悪趣味な見世物なのである。
 私がこの伝説のホラーを最初に観たのは一九八〇年、大阪の靭公園にある科学技術センターホールでの特別興行で、二本立てのもう一本がムルナウ監督、マックス・シュレック主演のゲテモノ映画『ノスフェラトゥ』だった。

 

怪物團 フリークス/Freaks
1932 アメリカ/公開1932
監督:トッド・ブラウニング
出演:ウォーレス・フォード、リーラ・ハイアムス、ハリー・アールス、デイジー・アールス、オルガ・バクラノヴァ、ロスコー・エイツ、ヘンリー・ヴィクター、ローズ・ディオン