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『映画に溺れて』第7回 犬が島

第7回 犬が島

平成三十年十月(2018)
飯田橋 ギンレイホール

 

 外国人が日本に抱くイメージ、神社、侍、相撲、寿司、歌舞伎、俳句、太鼓。それらを随所に散りばめた不思議な映画である。ベースは桃太郎の鬼ケ島だろうか。
 アメリカのウェス・アンダーソン監督によるコマ撮りアニメ。レイ・ハリーハウゼンの『アルゴ探検隊の大冒険』は実写とコマ撮りの組み合わせだったが、この『犬ヶ島』は全編コマ撮りアニメーション。

 舞台は近未来の日本。架空の都市メカ崎。犬の伝染病が蔓延し、独裁者小林市長は、犬は諸悪の根源であると主張して、市民を扇動。法のもとに、すべての犬を廃墟のゴミ島に追放する。市長の甥で養子の少年アタリが愛犬のスポッツを探しにゴミ島に渡り、島の生存犬たちがこれに協力する。
 タイトルは英語と日本語が併記され、各場面では漢字や仮名があふれ、アタリは日本語をしゃべるが、犬たちの会話はすべて英語。
 音楽は邦楽風で、ゴミの島でアタリと犬が決意する場面では『七人の侍』のテーマ曲が流れる。
 もともと犬嫌いの市長が大企業や闇社会と手を結んで、良識派の教授を暗殺し、選挙で再選、ゴミ島の犬全滅を謀る。

 犬たちがそれぞれ個性的で表情豊か。従順なペットやマスコットたちの中で、一匹だけ孤高のノラ犬チーフ。
 犬たちの声を担当するのも名優たち。それに引きかえ人間は紋切り型で魅力なし。
 ポップアートっぽい動く絵本といった趣だが、独裁者による犬の殲滅、ベルトコンベアで送り込んだ犬たちを機械的に処理するあたり、まさにナチスホロコーストの戯画化に違いない。

 

犬ヶ島/Isle of Dogs
2018 アメリカ・ドイツ/公開2018
監督:ウェス・アンダーソン
アニメーション(声)コーユー・ランキン、リーヴ・シュレイバーブライアン・クランストン