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『映画に溺れて』第44回 エクスカリバー

第44回 エクスカリバー

昭和五十八年十一月(1983)
大塚 大塚名画座

 

 ブロードウェイミュージカルの映画化『キャメロット』は暗黒の中世というよりは、華やかなお伽の世界で、アーサー王リチャード・ハリス、王妃グウィネビアのヴァネッサ・レッドグレーヴ、湖の騎士ラーンスロットのフランコ・ネロ。みんな歌い出すのだが、ほんとうに歌っていたのかな。アメリカのケネディ大統領はこのミュージカルが好きだったらしく、自分をアーサー王と重ねていたのかもしれない。
 やはり私のお気に入りはジョン・ブアマン監督の『エクスカリバー』だ。
 わくわくするような冒険ファンタジーの名品で、アーサー王伝説を手際よくまとめて、まるでSFアクションのような映像で見せてくれる。
 おそらく、のちのファンタジー映画『ロード・オブ・ザ・リング』などに与えた影響は大きいのではないか。
 ユーサー・ペンドラゴン王が敵将をだましうちにし、その妻を寝取って、そこで生まれたのがアーサーだが、父はその報いで死に、少年は王の血筋ながら孤児となる。
 やがて、石の剣を抜いて正統な王となり、魔法使いマーリンや円卓の騎士たちと平和な国家を築くのだが、マーリンと魔女モーガンの魔法対決もあり、高貴な騎士ラーンスロットと王妃の不倫がもとで、結局、国は滅亡に向かう。
 これはキリスト教が広まったことで、土着の魔法が闇においやられるその過渡期としての中世騎士物語である。
エクスカリバー』以後に観た二〇〇四年の『キングアーサー』は魔法も怪物も登場しない実録歴史ものとして描かれていて、私には全然物足りなかった。

 

エクスカリバー/Excalibur
1981 アメリカ/公開1981
監督:ジョン・ブアマン
出演:ナイジェル・テリー、ヘレン・ミレン、ニコル・ウィリアムスン