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『映画に溺れて』第217回 シモーヌ

第217回 シモーヌ

平成十六年一月(2004)
飯田橋 ギンレイホール

 

 舞台はハリウッド、アル・パチーノふんする売れない映画監督タランスキーはわがまま女優にふりまわされて、なかなか作品が完成せず、とうとう元妻のプロデューサーから契約を打ち切られてしまう。
 失意の彼の元へ、ファンであったコンピュータ技師から遺品が届く。それは人間そっくりの美女を画面上に作り出す画期的なソフトだった。
 仮想の女優を創作したタランスキーは、理想の外見、理想の声、理想の動きで肉付けし、それにシミュレエーションワン、略してシモーヌと名付ける。
 完璧な演技をするシモーヌの画像を未完の作品に合成で組み込み、作品を完成させるや、これが大成功の大ヒット。
 主演女優が仮想美女だということはタランスキーだけの秘密であり、私生活の謎が話題を呼んでシモーヌの人気は高まり、とうとうアカデミーの主演女優賞を獲得。が、当然ながら本人は会場に現れず、ますます世間の注目を浴びる。
 でも、ここからがつらい。
 待望のアカデミー賞は女優賞であって、監督賞でも作品賞でもなく、その後、売れるのはシモーヌだけ。タランスキーはまたもや自分の創ったシモーヌにふりまわされることになる。
 異常なシモーヌファンも登場し、監督自身に身の危険が。
 そこでタランスキーがとった決断とは。それはどんな結果となるのか。
 昨今のコンピュータグラフィックスの進歩はめざましい。近い将来、いや、まさに今、シモーヌのような人間とまったく変わらず、それ以上の理想の演技をする仮想美女が登場してもおかしくない時代となった。

 

シモーヌ/S1m0ne
2002/アメリカ/公開2003・9・13
監督:アンドリュー・ニコル
出演:アル・パチーノキャサリン・キーナー、レイチェル・ロバーツ、ウィノナ・ライダーイライアス・コティーズ、ブルイット・テイラー・ヴィンス