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『映画に溺れて』第342回 13 ザメッティ

第342回 13 ザメッティ

平成十九年九月(2007)
新橋 新橋文化

 予備知識なく映画を観ると、残念なこともあるが、得することもある。『13 ザメッティ』が当たりだった。
 フランスのどこか小さな町。移民の貧しい青年が雇われて民家の屋根を修理している。家に帰ると老いた母、足の不自由な兄、幼い妹がいて、この若者が賃仕事で家計を支えている様子。屋根修理を頼んでいる家は金持ちだが主人が麻薬中毒らしい。夫婦喧嘩していて、夫は妻に言う。もうすぐ大金の入る仕事の手紙が来るんだ。
 若者は屋根を直しながら、そっと聞いている。そして手紙が来た日に、主人は発作を起こして死に、若者は手紙を盗む。盗んだ手紙には鉄道の切符と、待ち合わせ場所のメモと「13」の番号札。青年は死んだ男の代わりに、目的地へと向かう。大金の手に入る仕事を求めて。
 そこにはひとりの男が待っており、番号札を見せると、車で森の奥の大きな屋敷へ連れて行かれる。人がいっぱい集まっている。部屋に通され、本人じゃないことがわかる。でも、まあ、人数がそろえばいいということになり、ユニフォームに着替えさせられる。背番号は「13」
 なにかのゲームが始まるのだ。不安が高まる。
 広間にユニフォームを着た男たちが並んでいる。
 ひとりずつ、銃が配られる。
 係りの男が叫ぶ。
「弾を一発こめろ」
 選手たちがぐるりと輪になって、リボルバーで前の男の頭を狙う。広間の周囲の客席では選手の番号に大金を賭ける金持ちたち。
 闇組織が企画する死のロシアンルーレット。生き残れば大金。負ければ死。
 私はこの映画を二本立ての一本で観たので、内容も知らず予備知識もなかった。それはまるで、主人公の青年と同じようなはらはらどきどきの体験だったのだ。

 

13 ザメッティ/13 Tzameti
2005 フランス/公開2007
監督:ゲラ・バブルアニ
出演:ギオルギ・バブルアニ、オーレリアン・ルコワン、パスカル・ボンガール