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『映画に溺れて』第354回 キル・ビル

第354回 キル・ビル

平成十六年三月(2004)
飯田橋 ギンレイホール

 私が所属している日本映画ペンクラブでアンケートがあった。好きな映画スター海外編。男優、女優、それぞれ三人を書いて提出する。私が選んだ女優はニコール・キッドマンシャーリーズ・セロンファムケ・ヤンセン。なにを隠そう、私は長身の美人女優が大好きなのだ。
 提出したあと、もうひとり思い出した。ユマ・サーマンである。主演作で一番好きなのは『Gガール』だが、やはり『キル・ビル』を忘れてはいけない。公開当時のポスター、黄色いつなぎのトレーニングウェアがなんともかっこよかったのだ。
 ユマ・サーマンふんするザ・ブライドは凄腕の殺し屋だが、足を洗って結婚することになる。その式場の教会へ元の仲間たちがやって来て、夫や牧師も含む列席者全員を殺す。彼女も痛めつけられ頭を撃たれる。が、奇跡的に命を取り止め、病院で数年の昏睡状態から目覚めた後、昔の仲間を探し出し、ひとりひとり殺していく。
 ストーリーはまるで梶芽衣子が主演した『修羅雪姫』ではないか。タランティーノ監督は日本の時代劇や任侠映画が好きだそうだ。
 ザ・ブライドの標的はダリル・ハンナルーシー・リュー演じる昔仲間の殺し屋たち。沖縄で千葉真一扮する刀鍛冶に名刀を作ってもらい、暴力団の女ボスになっているルーシーとは東京で戦う。ルーシーは組織ぐるみでこれと応戦。これらの場面がほとんど日本の時代劇や任侠映画を思わせる作りになっており、手裏剣をかわして天井に張り付くのは忍者ものだし、大量の敵を刀で倒すのは宮本武蔵一乗寺の決闘、栗山千明の鎖鎌は宍戸梅軒。雪の中で白い和服のルーシーと戦うのは『修羅雪姫』そのもので、梶芽衣子が歌う主題歌まで流れる凝りよう。
 さらにエンドクレジットには梶芽衣子の『さそり』まで聴かせる。タランティーノの日本趣味は相当のもの。

 

キル・ビルKill Bill: Vol.1
2003 アメリカ/公開2003
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ユマ・サーマンルーシー・リューデヴィッド・キャラダイン千葉真一栗山千明ダリル・ハンナ