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『映画に溺れて』第502回 Mr.ホームズ 名探偵最後の事件

第502回 Mr.ホームズ 名探偵最後の事件

平成二十七年十二月(2015)

青山 ギャガ試写室

 

 ジェームズ・ボンドは歳をとらない。

 イアン・フレミングによると第二次世界大戦時に英軍将校であり、戦後の冷戦時代にはMI6に所属する腕利きスパイとして活躍している。映画は一九六〇年代にショーン・コネリー主演で大ヒットし、その後、主演俳優を次々と交代させながら、二十一世紀の今でも若々しく生き続けている。時代が過ぎてもボンドは若いまま。第二次大戦中に二十代とすれば、相当のご老体のはずなのだが。

 一方、シャーロック・ホームズは歳をとる。生まれは十九世紀半ば、一説によると一八五四年生まれ。ワトスン医師はホームズが関わった事件の年代をかなり細かく書き残している。ホームズがワトスンと出会うのが一八八八年で三十代半ば、モリアーティとの死闘が一九九一年で四十前、やがて探偵を引退し養蜂を営む。

 ジェームズ・ボンドならぬシャーロック・ホームズが第二次大戦後も生きていたとしたら、九十歳は過ぎている。そんなホームズを主人公にしたのが『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』なのだ。

 老齢で記憶力の衰えたホームズは日本を訪れ、広島で記憶回復に効果があるらしい特殊な山椒を入手する。

 サセックスに戻り、養蜂を続けながら、ある事件を思い出そうとしている。人妻の素行調査と彼女の死、それが常にもやもやとして、真相がわからないままなのだ。果たして記憶はよみがえるのか。

 初老のホームズが戦前の映画館で自分を主人公にした映画を観る場面が出てくる。スクリーンに映しだされる劇中のホームズ。それを演じている俳優が『ヤング・シャーロック ピラミッドの謎』で少年ホームズを演じたニコラス・ロウだとは。

 

Mr.ホームズ 名探偵最後の事件/Mr. Holmes

2015 イギリス・アメリカ/公開2016

監督:ビル・コンドン

出演:イアン・マッケランローラ・リニー、マイロ・パーカー、真田広之、ハティ・モラハン、パトリック・ケネディニコラス・ロウ