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『映画に溺れて』第517回 アンタッチャブル

第517回 アンタッチャブル

昭和六十二年十月(1987)
新宿歌舞伎町 新宿プラザ

 

 私のブライアン・デ・パルマ初体験は一九七五年公開の『ファントム・オブ・パラダイス』で、これはわが生涯に観た映画の中でも上位に入る。その後、『キャリー』『悪魔のシスター』『愛のメモリー』『フューリー』『殺しのドレス』と見続けたが、ホラー色の強いカルト系の監督というイメージが強かった。
 そのデ・パルマ禁酒法時代のシカゴを背景にギャングと官憲の闘争を重厚に描いたのが『アンタッチャブル』である。最初の場面、町の食堂に幼い女の子が鍋を下げてお使いに来る。お母さんが風邪をひいたの。店では胡散臭い男が店主と口論している。どうしても酒を買わないのか。おまえたちのビールはいらない。そうか、わかったよ。捨てぜりふを残して男が立ち去ると、カウンターに鞄が置き忘れてある。女の子は気づいて、鞄を手に「おじさん、忘れ物」と言いながら男を追う。と、とたんに鞄が爆発して、店は破壊される。カポネの酒を断ったら、こうなるという警告だった。
 酒の密売と暴力によって暗黒街のトップとなったアル・カポネ財務省から酒類取締官エリオット・ネスが警察に出向。が、張り切って突入した手入れは失敗。賄賂と脅しで警察はカポネの手先となっていた。失意のネスは偶然出会ったパトロール警官マローンに協力を頼む。正直で正義感が強く汚職と無縁なために出世とも無縁。警官はだれも信用できない。が、あんたは信用できる。マローンは言う。戦争となったら、やつらはとことんやるぞ。カポネと本気で戦う覚悟があるのか。
 これにイタリア系の新人警官ストーンと本省から派遣された財務官のウォレスが加わり、四人でカポネの組織に挑むのだ。
 カポネのロバート・デ・ニーロとマローンのショー・コネリー。存在感のあるベテランふたりにネスのケビン・コスナー、ストーンのアンディ・ガルシア、ウォレスのチャールズ・マーティン・スミス。配役もまた素晴らしい。

 

アンタッチャブル/The Untouchables
1987 アメリカ/公開1987
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:ケビン・コスナーショーン・コネリーアンディ・ガルシア、チャールズ・マーティン・スミス、ロバート・デ・ニーロ、ビリー・ドラゴ、チャード・ブラッドフォード、パトリシア・クラークソン